旅は道連れ 韓国から来た「あまちゃん」ファンとの出会い

[ 2023年7月24日 08:00 ]

“北限の海女”による素潜り実演
Photo By スポニチ

 【笠原然朗の舌先三寸】60歳の定年を前にして取得した長い休暇。盛夏の岩手県三陸を巡る。

 3日目はJR八戸線の種市から久慈まで列車移動。現在、NHKBSなどで再放送中の朝の連続テレビ小説「あまちゃん」のロケ地として有名になった久慈市の小袖海女センターを目指す。往路はバスで。復路は「みちのく潮風トレイル」のコース約10キロを歩いて宿泊場所である久慈へ戻ることにする。

 再放送効果か、センターでは“北限の海女”による素潜り実演を見学する人は40人ほど。コロナ禍で途絶えていた観光客も戻ってきたようだ。ほとんどの人がノーマスク。

 奇岩に囲まれるようにしてできたコバルトブルーの入り江にはウニのじゅうたんができているのか?

 潜るたびに二人の海女さんが両手いっぱいにウニを獲って上がってくる。水温は18度とか。サウナの水風呂並みの冷たさだ。

 見学するには500円のチケットを買わないといけないが、厳しいチェックがあるわけでもなく、のんびりした雰囲気も良い。獲れたウニは販売。その場でむいてくれ、食べることもできる。値段は大きさによって1000円、800円、600円。1000円のを購入し食べた。食べ応えもあり、濃厚な甘さも獲れたてならではだ。

 一人旅の若者がいた。同じバスの客だ。孤独をまとい、不安そうにしている。話しかけてみた。

 ヨウさんは韓国からの旅行者。「あまちゃん」の大ファンで、5日間の休暇を利用して“聖地”久慈を訪れたのだとか。

 会話は片言の英語と、携帯電話の翻訳機能頼り。彼は25歳。大学を中退し、製紙会社で勤めたあと軍隊へ入り、暗号解読班で働いていたが一念発起の末に公務員試験を受けた。

 「難しい試験で、ずっと勉強をしていました。“あまちゃん”をみて耐えました」

 ドラマの登場人物の中では主人公・天野アキの母親、春子を演じた小泉今日子が好きなのだとか。

 「日本の文化も食べ物も大好き。前回は東京ディズニーランドに来たけど、ここはずっと来たかった。夢がかないました」と話してくれた。政治のレベルではぎくしゃくし続ける日韓関係だが、日本に韓流ドラマ好きがいるように、韓国にも日本ファンもいる。

 素潜り実演をしてくれた海女さんの一人、きたむらさきうに子さんにヨウさんとツーショット写真をお願いした。「彼は韓国から来た“あまちゃん”ファンで…」と説明したら、「うれしい」と快く応じてくれた。「私もチャン・グンソクが大好きなの」との告白もファン同士のエール交換だ。

 国際親善とは、その国に生まれ、自然と国を背負っている個人同士の交流から始まると思う。旅はお互いを理解する機会も作る。

 ヨウさんも久慈まで歩くという。“じぇじぇじぇ”の展開も、旅は道連れである。海を背景にそそり立つカブト岩や釣り鐘洞などの奇岩が私たちを迎えてくれた。

続きを表示

この記事のフォト

「美脚」特集記事

「STARTO ENTERTAINMENT」特集記事

2023年7月24日のニュース