「鎌倉殿の13人」小栗旬 佐藤浩市への憧れ 義時&上総広常に投影「忘れもしない」“分岐点”の撃たれ役

[ 2022年4月17日 20:45 ]

「鎌倉殿の13人」第15回「足固めの儀式」小栗旬インタビュー(下)

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」第7話。上総広常(佐藤浩市・左)と北条義時(小栗旬)(C)NHK
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 俳優の小栗旬(39)が主演を務めるNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(日曜後8・00)は17日、第15回が放送され、18年ぶりの大河出演となった俳優の佐藤浩市(61)が圧倒的な存在感を示してきた“坂東の巨頭”こと房総半島の豪族・上総広常が“非業の死”を遂げた。第7話(2月20日)から本格登場し、主人公・北条義時(小栗)の師匠的存在に。“師匠”の最期を見届けた小栗に、撮影の舞台裏を聞いた。

 <※以下、ネタバレ有>

 ヒットメーカーの三谷幸喜氏が脚本を手掛ける大河ドラマ61作目。タイトルの「鎌倉殿」とは、鎌倉幕府将軍のこと。主人公は鎌倉幕府2代執権・北条義時。鎌倉幕府初代将軍・源頼朝にすべてを学び、武士の世を盤石にした男。野心とは無縁だった若者は、いかにして武士の頂点に上り詰めたのか。新都・鎌倉を舞台に、頼朝の13人の家臣団が激しいパワーゲームを繰り広げる。三谷氏は2004年「新選組!」、16年「真田丸」に続く6年ぶり3作目の大河脚本。小栗は8作目にして大河初主演に挑む。

 第15回は「足固めの儀式」。源義経(菅田将暉)率いる一軍が迫っていると知った木曽義仲(青木崇高)は、後白河法皇(西田敏行)を捕らえて京に籠る。一方、都ばかりに目を向ける源頼朝(大泉洋)に対し、御家人たちが失脚を企み、鎌倉は二分。義仲の嫡男・義高(市川染五郎)を旗頭とする反頼朝派には、上総広常(佐藤)も加わった。北条義時(小栗)は御家人たちの計画を潰すため、大江広元(栗原英雄)らと連携し…という展開。

 しかし、すべては広常を脅威に感じていた頼朝の謀略だった。「最も頼りになる者は、最も恐ろしい」「敢えて謀反に加担させ、責めを負わせる。見事な策にございます」(広元)。梶原景時(中村獅童)に斬り役を命じ、さらには御家人たちの目にさらす粛清。その場は凍りつき、御家人たちは動けない。頼朝は「今こそ天下草創の時。わしに逆らう者は何人も許さん。肝に銘じよ!」と怒声を上げた。

 上総広常は、佐藤が「新選組!」で演じた初代筆頭局長・芹沢鴨役を彷彿。窮地の頼朝に手を差し伸べ、頼朝のことを親しみを込めて「武衛(ぶえい=佐殿より尊称)呼び」。上洛に備え、手習いに励むなど、べらんめえ口調にチャーミングさも兼ね備え、今作きっての“愛されキャラクター”となったが、陰謀に巻き込まれて退場。視聴者からは毎週「神回」の声も上がるが、過去回を塗り替える今作最大の衝撃に包まれた。

 小栗は「ある意味、第14回まで何かと我慢をしてきた義時が、ある種、初めてスポットライトを浴びる回。その相手が上総介広常であり、佐藤浩市さん。自分が義時を創っていく上で、本当に大きな力を頂きました」と感謝した。

 第12回(3月27日)のラスト。散乱した字の書き損じを義時に見られた広常は「若い頃から戦ばかりでな。まともに文筆は学ばなかった。京へ行って、公家どもに馬鹿にされたくねぇだろ。だから、今のうちに稽古してんだよ。人に言ったら殺す」と打ち明けた。そして今回、広常の館にあった鎧の中のから封書が出てきた。頼朝は「子どもの字か。読めん」。代わりに義時が読み上げた。頼朝の大願成就と東国の太平のため「これから3年のうちにやるべきこと」が書かれていた。

 「頼朝は文を丸めて『あれは謀反人じゃ』と立ち去りましたが、もしかしたら後悔の念みたいなものがあったんじゃないかなと思います。上総介は自分の脅威になるような考えは持っていなかったんじゃないかと。上総介の文のシーンは非常に印象に残っています。撮影自体は緊張感を持ちながら、いつも賑やかに進んでいるんですけど、上総介が斬られる一連のシーンはこの現場でもベスト3に入るピリッとしたムード。あの日は1日、しんどかったですね」

 佐藤とは10年のフジテレビ「わが家の歴史」など同一出演作はあるものの、同一シーンの共演となると、07年に公開された映画「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」(監督三池崇史)以来、実に15年ぶり。源平合戦をモチーフにした異色の和製ウエスタン活劇。小栗は静(木村佳乃)の夫・アキラ役、佐藤は平家ギャングのリーダー・平清盛役を演じた。

 「有無を言わさず浩市さんに撃たれる村人役で、そのシーンは大きな水たまりがあったんですよね。その時、浩市さんが『小栗、(水たまりか、普通の地面か)どっちに倒れるかで、おまえの俳優人生が変わる。ここがおまえのちょっとした分岐点だな』って。忘れもしないです。バーンと撃たれて、思いっきりバシャっと水たまりの中に倒れて濡れる芝居を、うまく誘導していただきました(笑)。それ以降、色々な現場ですれ違いみたいになっていて、しっかりお芝居をさせていただいたのは今回がほぼ初めてという感じ。なので、楽しくて仕方がなかったですし、やっぱりカッコよかったですね、浩市さんは」と明かした。

 「上総介を浩市さんが演じてくれたことで、自分が浩市さんにずっと抱いてきた憧れの気持ちと、義時が上総介にどんどん信を置いていく姿がリンクする部分があって。そこは自然と演じられました。浩市さんのチャーミングさも、上総介のキャラクターに表れていますよね。さすがは浩市さんの人となりをよくご存知の三谷さんだからこそのアテ書き(役者のパーソナリティーを登場人物に当て込む)だなと思いました」

 水たまりに倒れるか否かの“ターニングポイント”から今回の“師弟関係”共演。芝居の神様はこの邂逅を待っていたのかもしれない。

 =おわり=

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2022年4月17日のニュース