今見ても新しい!丸ごと森田芳光を楽しんじゃえ

[ 2021年9月7日 16:50 ]

「森田芳光70祭」でトークショーを行った森田監督夫人でプロデューサーの三沢和子さんと宇多丸
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 【佐藤雅昭の芸能楽書き帳】「の・ようなもの」(1981年)、「家族ゲーム」(83年)、「失楽園」(97年)など映画史に刻まれる名作を数多く残した森田芳光監督。その映画人生をたどるプロジェクトが全国ゆかりの地で本格的に始動した。

 森田監督は2011年12月20日に61歳の若さで永眠。存命であれば古希も過ぎ、今年がちょうど没後10年にあたる。そんなタイミングで企画された一大イベントは「森田芳光70祭(ななじゅっさい)」と題され、新旧ファンの注目を集めている。

 時代を先取りし、実験的な手法も駆使して多彩な作品で映画界を彩った森田監督。ほぼすべての監督作品をブルーレイ化したボックスセットがプロジェクトの目玉となる。商業映画デビュー作となった「の・ようなもの」から遺作となった「僕達急行 A列車で行こう」(12年)まで26本がラインアップ。「そろばんずく」だけが関係者の許諾を得られなかったそうで、「コンプリート(の・ようなもの)」となったのは残念でならない。命日に11万円(税込み)の価格で発売される。

 「森田芳光全映画」と題した豪華本もリトル・モアから9月16日に発売予定だ。18年冬に池袋の新文芸坐で実施された「全作品上映会」で、監督夫人でプロデューサーの三沢和子さんと、森田作品の熱烈ファンとして知られるラッパーのライムスター宇多丸(52)が行った27回に及ぶトークショーの内容を加筆修正して掲載。さらには爆笑問題の太田光(56)、鈴木京香(52)、本木雅弘(55)、吉本ばなな(57)ら豪華な面々が寄せた文章などが収録されている。

 さらに9月から10月にかけては日本映画専門チャンネル、東映チャンネル、映画・チャンネルNECO、衛星劇場などのCS局で特集が組まれるほか、ゆかりの映画館での上映会も11月まで続く。9月4日には森田監督が生まれ育った渋谷の円山町にあるユーロスペースで学生時代に手掛けた8ミリ作品「映画」(40分)、「工場地帯」(35分)が上映され、三沢夫人と宇多丸が熱いトークショーを繰り広げた。

 宇多丸はミュージシャンらしく、森田作品の音楽に注目。金沢でロケが行われた「黒い家」では「ヒップホップの走りのような使い方をしている」などと指摘した。劇場の近所にあった料亭が森田監督の実家。三沢さんは「庭があって、その向こうがソープランド。友達を集めて8ミリ作品の上映会をしましたが、ソープランドの白い壁に映してたんです」と秘話を明かした。

 ブルーレイ・ボックスの映像特典として「の・ようなもの」以前の自主映画作品を編集再構成したダイジェスト版を製作中。費用もかさんだはずで、三沢さんも「清水の舞台から飛び降りる覚悟で8ミリからデジタル化しました」と苦笑い。「若い人は個性豊かにお撮りになったらいい。見ていただきたい理由の一番がそれです」と、“あすの森田芳光”にエールを送った。

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2021年9月7日のニュース