ブライアン・メイ ソロ・リマスター盤の「本来のクイーンサウンド」

[ 2021年8月17日 10:00 ]

ブライアン・メイのアルバム「バック・トゥ・ザ・ライト~光にむかって~」のジャケット
Photo By 提供写真

 【牧 元一の孤人焦点】英・ロックバンド「クイーン」のギタリスト、ブライアン・メイのソロアルバム「バック・トゥ・ザ・ライト~光にむかって~」リマスター盤が今月11日に発売された。

 このアルバムが初めて世に出たのは1992年9月。クイーンのボーカリスト、フレディ・マーキュリーが91年11月に亡くなってから1年たっておらず、バンド活動は一時休止していた。

 収録曲は、ブライアンが88年から92年にかけて書いていたもの。レコーディングにはクイーンのベーシストのジョン・ディーコン、ロックバンド「レインボー」などで活躍したドラマーのコージー・パウエル、2002年からロックバンド「ディープ・パープル」で活動しているキーボーディストのドン・エイリーらが参加している。

 クイーン研究家の石角隆行氏は「このアルバムを初めて聴いた時、『クイーンの本来のギターサウンドが復活した』と思った。クイーンの初期はブライアンのギターがフィーチャーされていたが、やがてシンセサイザーが多用されるようになり、ギターの色が薄れた。このアルバムには本来のクイーンの音があり、ポップ色よりハードロック色が濃い」と指摘する。

 コージー・パウエルと共作した4曲目「華麗なる復活」、7曲目「ブルーな気持ち」、最近のクイーンのライブでもおなじみの9曲目「地平線の彼方へ」のギターは情緒的で重厚感があり、聴き応えがある。

 石角氏は「ブライアンはもともとギタリストとして評価されていた人。クイーンの初期の頃は女性ファンばかりだったので男性がファンを名乗りにくかったが、当時から『クイーンはともかくブライアンのギターは良い』と言う男性がいるほど、しびれるギターを構築していた。このアルバムでは久しぶりにギター・オーケストレーションも復活させている」と説明する。

 ボーカルも力強い。2曲目「バック・トゥ・ザ・ライト~光にむかって~」のハイトーンボイスや「華麗なる復活」のシャウトが胸に刺さる。ブライアンはクイーンのアルバム「オペラ座の夜」の収録曲「’39」や、「華麗なるレース」の収録曲「ロング・アウェイ」などで繊細な歌声を披露しているが、このアルバムには、別人かと思うほどの確固たる響きがある。

 石角氏は「ブライアンはこのアルバム発売後にツアーを行った。ライブでは自分がフロントマンになる必要があり、相当ボイストレーニングを重ねたようだ」と話す。

 6曲目「ドリヴン・バイ・ユー」に関する興味深い話がある。石角氏の著書「クイーン全曲ガイド2 ライヴ&ソロ編」によれば、フォード自動車のCM曲だったこの曲がシングル発売されたのは91年11月25日で、フレディ逝去の翌日。ブライアンは当初、フレディの病状を鑑み、発売延期に傾きかけていたが、関係者を通してフレディから「絶対に発売しろ」とのメッセージを受け取っていたという。

 「ドリヴン・バイ・ユー」のコーラスはクイーンっぽく、そして、ブライアンのボーカルはちょっとフレディっぽい。
 
 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。

続きを表示

2021年8月17日のニュース