古舘寛治「脳みそが筋肉痛」滝藤賢一も刺激の“古舘メソッド”とは?「コタキ兄弟と四苦八苦」ネット反響

[ 2020年1月17日 10:00 ]

「コタキ兄弟と四苦八苦」古舘寛治×滝藤賢一対談

ダブル主演を務める古舘寛治(右)と滝藤賢一(C)「コタキ兄弟と四苦八苦」製作委員会
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 俳優の古舘寛治(51)と滝藤賢一(43)がダブル主演を務めるテレビ東京のドラマ24「コタキ兄弟と四苦八苦」(金曜深夜0・12)が深夜ドラマながら話題を呼んでいる。名脇役コンビに、脚本・野木亜紀子氏、演出・山下敦弘監督(43)というドラマ通もうなる座組。古舘と滝藤が対談を繰り広げた。米ニューヨークで学んだ演技メソッドを自己流にアレンジした“古舘メソッド”と“長期”の本読みに、滝藤も刺激。「セリフが入っているから、自由になれました」。舞台経験も豊富な古舘だが、膨大なセリフ量に「脳みそが筋肉痛」と苦笑いした。

 TBS「逃げるは恥だが役に立つ」「アンナチュラル」、日本テレビ「獣になれない私たち」などの野木氏によるオリジナル脚本で、映画「天然コケッコー」「苦役列車」、テレビ東京「山田孝之の東京都北区赤羽」などの山下監督が全話演出を務める。

 ムラタ(宮藤官九郎)という男と出会ったことから、1時間1000円の“レンタルおやじ”に挑む愛すべきダメおやじ2人、元予備校講師で現在は無職の独身、兄・一路(いちろう、古舘)と8年ぶりに実家に戻った弟・二路(じろう、滝藤)を通して紡ぐ人間讃歌コメディー。一路が足繁く通う「喫茶シャバダバ」の看板娘・さっちゃんを芳根京子(22)が演じる。

 「Yahoo!テレビ」の星取りは平均4・28点(5点満点)、5点が65%と高評価(15日現在)。インターネット上には「主演の2人が自然すぎて印象に残らないという摩訶不思議」「古舘寛治の自然体の演技が光っていた。どんどん、いろいろことに巻き込まれていく姿が自分に見えた」「どうでもいいやり取りを聞いているだけでおもしいから、間違いないやつです」などの反響が続々。「現代用語の基礎知識」の公式ツイッターも「古舘寛治さん演じる兄・一路の愛読書が『現代用語の基礎知識』という設定。滝藤賢一さん演じる弟・二路と対照的な兄の性格を感じさせるアイテムとして使っていただいています。次回も見ます!」とツイートした。

 初回(10日)は「怨憎会苦」。鈴子(市川実日子)が「離婚届に判を押してほしい」と依頼してきた。第2話(17日)は「求不得苦」。親戚のフリをして結婚式に参列してほしいというオファーが舞い込む。

 ――お二人の初共演はいつになりますか?

 【滝藤】平山浩行さんが主演のNHK「渋谷でチョウを追って~動物行動学者・日高敏隆~」(2008年9月、NHK BS―hi)という半分ドラマ、半分ドキュメンタリーみたいな作品かな。僕はチョウの研究者の役。古舘さんは駅員と、戦争から帰ってきた兵隊さんみたいな2役。

 【古舘】僕の得意な、全くセリフのない役です。

 【滝藤】メガネをかけてるか、かけていないかぐらいの差だったと思いますが、2役とも、まんま古舘さん。それが初共演だった気がします。

 ――お二人の絡みはありましたか?

 【滝藤】僕が平山君と駅のホームのベンチで話しているところに、フラフラ掃除をしに来たような…。

 【古舘】掃除をしていたのは覚えています。その後が映画「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」(10年公開、監督東陽一)(※1)。毎日ロケバスで三浦海岸のあたりまで1時間半ぐらいかけて行っていて、その時ずっと滝藤君の隣に座って、しゃべっていたんです。何かウマが合うというか、仲良くなって。それ以来、久しぶりに会って「何か一緒にやりたいね」と。

 【滝藤】17年頭のことで、フジテレビ湾岸スタジオで古舘さんと久しぶりに再会して「何か一緒にやれたらいいね」と。その数日後に僕の初主演作「俺のダンディズム」(14年4月期、テレビ東京)の濱谷晃一プロデューサーと渋谷でお茶して、あれよあれよという間に、こんな大きなプロジェクトになりました。「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」の時、僕はほぼ古舘さんとしかしゃべっていないですね。その時、古舘さんが「オレ、あるテレビ局に出たら、演技ができない素人だと言われる」みたいなこと話していた気がします。

 【古舘】映像の仕事を始めた頃は割と一時期、言われたかも。「古舘は芝居が下手」という認識の人は今も多いと思いますけどね。

 【滝藤】僕は「古舘さんはリアルな芝居する人」という認識だったから「世間からそんなふう言われているんだ」と思ったことは覚えています。

 【古舘】「アイツの芝居は何なんだ」みたいな評価は、別に今もあると思いますけどね。それはたぶん、僕のやっていることが他の多くの俳優さんとは違うからなんだと思います。だから今回は、主役に選んでいただいたので、自分がおもしろいと思う表現をできる場が与えられたと。そういう場が欲しかったので、このドラマを企画したという部分もあるんですが。滝藤君にも山下監督にもプロデューサーにも、こういう表現をしたいんだと、最初から“わがまま”を言わせてもらいました。かなり好きにやらせてもらえたという意味でも、非常にありがたい現場になりました。

 ――それが、滝藤さんが7日深夜の「チマタの噺」(火曜深夜0・12)でおっしゃっていた「古舘メソッド」のことですか?

 【滝藤】ホワイトボードを使って、山下監督やプロデューサー、脚本の野木さんも共有しています。

 【古舘】僕がどういう表現を目指しているかというと、やっぱり「俳優が演技をしているように見えない演技」が好きなんですよね。「その人物がフィクションの世界の中に本当に生きている」ような。例えば、今まさにしゃべっている僕のように、人間は言いよどむし、言葉を探すし、言葉が出なかったりしますよね。今この瞬間に常にいろいろと考えながら生きているのが人間であって、例えば、机にぶつかったり、水をこぼしたり、ミスも犯しながら何かに向かっている。そういう人間の姿がドラマの中にある時、そのフィクションがおもしろくなるのであって、整理された芝居で表現されても、僕はおもしろくないと思うんですよね。ただ、僕1人がそういう芝居をしていると、視聴者の皆さんからすれば『古舘はセリフを間違えたのかな?』とか『演技を失敗したのかな?』と見られちゃうと思うんです。それは、やっぱり残念。以前は『視聴者の皆さんが判断すればいい。自分の演技を説明するのは野暮』と思っていたんですが、最近は『自分がおもしろいと思うことは何なのか、ちゃんと言語化していくべきなんだ』と思うようになりました。“古舘メソッドは?”と質問いただいて、ありがたかったので、説明してみたんですが、最近は自分の演技について視聴者の皆さんにも伝えてみたいと考えています。今回は、滝藤君がおもしろがってくれたので。俳優から方法論を提示できる現場は稀有なので、いつも『幸せだな』と言って、滝藤君にうるさがられています(笑)。

 ――「古舘メソッド」による演技をされてみて、第1話や第2話で印象に残っていることはありますか?

 【滝藤】1話と2話はセリフが一番入っていたので、一番自由だったと思います。芝居の可能性が無限に広がった回じゃないですか。最近の作品だと、僕は芝居の新鮮さを大切にしていた部分がありました。その日、共演者に初めて会って、言葉を交わして、芝居をして。だから、芝居をすればするほど、新鮮さを失うんじゃないかと。それが今回の古舘さんのやり方は本読みからじっくり。無名塾(※2)も稽古が2カ月あるから、本読みを3週間ぐらいするんですよね。当時はセリフが多くても5つぐらいしかなかったから、本読みも眠いだけでしたが(笑)、今ようやく、いかに必要なことなのか、分かりました。古舘さんの本読みは本読みで固めるんじゃなく、とにかく相手のセリフを聞く。その方が確かにセリフも入るし、その中で自分が自由になれましたよね。「作品に早く関われば関わるほど、役が自分の中に染み込んでくる」みたいなことを、僕はあまり信じていなかったんです。それが今回はセリフが完璧に入っているから、その場面にポンと行けば、何がどう転んでも、相手の影響だけで涙がボロボロ出るし、怒りが湧いてくるし、感情が湧き起こってくる。非常に不思議な経験でした。過去を振り返ると、早い段階から向き合った映画「はなちゃんのみそ汁」(15年公開)も、いつどこでスタートがかかってもボロボロ泣けたんですよね。だから、やっぱり作品に参加するのは早ければ早い方がいいという考えになりました。

 ――ドラマのタイトルに引っ掛けて「四苦八苦」されたエピソードがあれば、教えてください。

 【滝藤】今回のセリフ量は四苦八苦しましたね。

 【古舘】この本が普通のテレビドラマと比べ、少し異質だとするならば、同じ場所でずっと会話劇を繰り広げているところ。演劇ぐらい長いセリフのシーンがいっぱいあって、延々しゃべっているんです。僕は普段ドラマの主役もやったこともないですから、こんなにセリフを覚えたことはないですし、舞台も含めても、こんなにセリフを入れたことはありません。脳みそがずっとジンジンしているというか。脳みそは筋肉と同じらしいんですが、だから、本当に“脳みそが筋肉痛”だったと思います(笑)。

 【滝藤】古舘さんがちょっと体調を崩された時もありましたね。

 【古舘】休むわけにはいきませんから。確かにそれが一番喫緊の四苦八苦。

 【滝藤】本もめちゃくちゃおもしろいし、ゲストも素敵な人ばかり。セリフをうろ覚えで撮影に臨むということが、もう悔しくて。そこは苦しみましたね。やっぱり完璧に覚えて、伸び伸びと自由にと皆さんとセッションしたいという思いがありました。

 ――1月期のドラマということもあり、最後に今年の抱負をお願いします。

 【滝藤】ムキムキのアクション俳優になります(笑)。本気です!12月から食事制限も始めて、3キロ絞りました。トレーニングで筋肉に変えています。

 【古舘】どうかどうか、この作品をたくさんの人に見ていただきたいですよね。評価は人それぞれですが、ご覧いただかないことには作品の意味がないし、作品は見る人がいて完結するので。あとは演出をしたいと思っているので、空いた時間で実現に向けて、行動していきたいです。そして、世界の平和を願います。僕らは平和じゃなきゃ、何もできないですから。

 【※1】「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」浅野忠信と永作博美が主演。戦場カメラマン・鴨志田穣氏の自伝的小説を原作に、元妻で漫画家の西原理恵子氏らとアルコール依存症克服に挑む姿を描く。古舘と滝藤はアルコール病棟の患者を演じた。

 【※2】無名塾。仲代達矢主宰の俳優養成所。役所広司らを輩出。滝藤は98年に入塾した。

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