藤井聡太七段 逆転で王将戦予選白星スタート 年間最高勝率更新へ望みつなぐ

[ 2019年2月12日 18:18 ]

第69期大阪王将杯王将戦の1次予選2回戦で池永天志四段に勝った藤井聡太七段だが、終局後は疲れた様子
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 将棋の最年少プロ棋士・藤井聡太七段(16)が12日、大阪市の関西将棋会館で指された第69期大阪王将杯王将戦(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)の1次予選2回戦で池永天志四段(25)に153手で薄氷の勝利を収め、今期初戦を飾った。

 過去に参戦した2期はともに1次予選敗退と、数々の実績から考えれば不思議なほど苦戦しているのが王将戦。この日も振り駒で先手となり、得意な角換わりの戦型になったところまでは問題を感じさせなかった。

 ただ、昼食を挟んで45分の長考に沈んだあたりから、持ち時間に差をつけられ始めたのが“異変”の始まりだったのかもしれない。

 午後3時ごろには、会館隣りのマンションで誤作動した火災警報器の警報が数分間にわたって鳴り続くハプニングが発生。終局後、「その影響で間違えたことはなかったと思います」と話したが、あまりの大音量に、対局中にもかかわらず、ちらちらと外を見る場面があり、集中力が多少なりとも削がれた一面はあったはずだ。

 終局後、展開に「誤算もあった」という藤井に対し「勝ちはあったと思う」と振り返った池永。その説明通り、苦しい展開に顔をゆがめる藤井は、自陣の王がほぼ丸裸になる状態に終盤、追い込まれる。報道陣が待機する記者室でも「これはさすがの藤井でも厳しいのでは」と、5日の順位戦C級1組の対局に続く黒星を喫し、3度目の連敗やむなしの声も出ていた。

 ただ、ここで詰ませにかかった池永に「桂馬があると…。持ち駒を勘違いした」という痛恨のミスが起こる。この千載一遇のチャンスを逃すまいと、反撃に転じた藤井。「詰まされたらしょうがない」という怒とうの攻め将棋で、最後は勝利の女神の微笑みを自分のもとにたぐり寄せた。

 今期の勝率はこれで・8444(38勝7敗)。中原誠十六世名人が1967年度に記録した歴代1位の勝率・8545(47勝8敗)を51年ぶりに更新できるかどうかが注目されている。本人は「年度記録に関してはあまり意識する必要はないと思っています」とそっけないが、ここから4連勝すれば再び数字的に上回ることになる。

 ただ、年度末まであと1カ月半。1敗でもすれば、3月末までに見込まれる対局数から、再び超えることはほぼ絶望的なだけに、これ以上負けられない厳しい戦いが続く。

 そんな状況で迎えるのが次局、羽生善治九段(48)以来となる史上2人目の連覇がかかる、16日の朝日杯将棋オープン戦の準決勝・決勝。ここ最近の19局で18勝1敗と絶好調な渡辺明棋王(34)と決勝で、公式戦初対戦が実現する可能性もある。「しっかり集中力を高めて臨みたい」。激しい対局で疲労こんぱいだった藤井だが、この言葉には力を込めた。

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