“幻の作家”日野日出志氏 恐ろしい作品世界描くその素顔とは

[ 2018年10月19日 08:00 ]

スポニチの漫画紙「アルチーボ」を読む日野日出志氏。現在は「部長 島耕作」を連載中
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 スポニチの週刊漫画紙「アルチーボ」のインタビュー(11月5日発売号から掲載)で、ホラー漫画家の日野日出志(ひの・ひでし)氏を取材した。1970年代から活躍し「蔵六の奇病」「地獄変」など短編を中心に450作以上を発表してきた第一人者だ。だが、ここ20年ほどは目立った作品発表もなく“幻の作家”となっていた。

 取材のきっかけは今夏、千葉県銚子市のローカル鉄道・銚子電鉄が発売して話題になったスナック菓子「まずい棒」。パッケージを見て驚いた。描かれていたのは、大きな目玉と、額に張り付く前髪チリチリの見覚えあるキャラクター…まさか?と思い調べると、やはり日野氏のデザインだった。幻のホラー作家がなぜスナック菓子のデザインを?すぐに関係者を通じ、取材を申し込んだ。

 少年時代、日野氏の作品には幾つもトラウマを作られた。おぞましい風貌の“化け物”の残酷な所業はもちろん怖かったが、日野氏の真骨頂は、その“化け物”の多くが元は普通の人間という点にあったと思う。異形の者となる怖さ、悲しさ、理不尽さが子供心に恐ろしく、いたたまれない思いになった。

 取材前は、どんなに怖く変わった人だろうかと想像して緊張した。だが会ってみれば、恐ろしい作品世界をみじんも感じさせない優しい人だった。名作執筆時の心情を丁寧に語り「作品と作者のギャップが、これほど大きい人はいないと言われます」と苦笑いした。ちなみに「恐がり」だそうだ。そんな素顔を「読者にとってマイナスになりかねないので、積極的に話すことはなかった」という。

 取材では、ここ20年画業をセーブしていた理由も聞いた。さまざまな思いが絡み合ってのことだったが、印象的なのはホラー漫画を描く苦悩。最愛の母ら親族の死が続き「描くことに疲れていた」という。「母親は漫画の中で死なせていますしね」と、代表作の1つ「地獄の子守唄」で描いたフィクションが心に引っ掛かっているようでもあった。

 人の死を描く仕事でもある。また、仕事と私生活が明確に分けられない仕事でもある。「家で仕事していたし、寝ても覚めても怖いアイデアを練っていた。境界線を引くのは無理でした」。長年の疲労が積もったところに身内の死が重なり、創作と割り切って描けなくなったのかもしれない。

 他にもホラー漫画誌ブームの終えんなど、さまざまな理由があり、原稿用紙と向き合う時間が減っていったようだ。

 そんな日野氏が今、「まずい棒」の仕事をきっかけに再び創作意欲に火がついたのだという。「スイッチが入ったみたいでね。また何か描きたいと思ってるんだよ」と楽しそうに話した。ファンとして、こんなにうれしいことはない。

 今、日野氏が進めているのはホラー絵本の製作。「以前のように怪奇一辺倒でなく、叙情に寄った物語を絵本にしてみたい」と話している。あせらず急がずでいいので描き続けてほしい。怖くて悲しい日野ワールドの復活を楽しみにしている。(岩田 浩史)

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