秋田出身・内館牧子さんがエール “新入幕力士”金足農、結びの一番で大横綱に挑め

[ 2018年8月21日 09:00 ]

<日大三・金足農>決勝進出を決め、全力で校歌を歌う金足農ナイン(撮影・北條 貴史)
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 第100回全国高校野球選手権で金足農が秋田県勢として103年ぶりに決勝に進んだ。「雑草軍団」と呼ばれるナインがきょう21日の決勝戦で激突するのは、春夏連覇を目指す大阪桐蔭。秋田市出身の脚本家・内館牧子さん(69)がスポニチ本紙に特別寄稿し「豪快で陽気な秋田人気質を全開にして、天下の大横綱に挑んでほしい」とエールを送った。

 今回、秋田代表の金足農業が決勝進出を決めた瞬間、身震いした。

 これは相撲で言えば、ここまで全勝で来た新入幕力士が、同じく全勝で来た東の正横綱と、千秋楽結びの一番で当たるに等しい。

 もちろん、金足農業は秋田県の強豪校ではある。だが、日大三高や横浜など、これまでに当たってきたチームは全国区の横綱である。

 その上、これら横綱や大関などのチームには、野球エリートがひしめいている。野球の素質を認められ、他府県などから野球留学してきた精鋭たちの軍団だ。

 一方、金足農業は中泉一豊監督以下、ベンチ入りした18人の選手は全員が秋田出身である。「地元の子たち」である。さらには多少は制約もある県立ときている。

 こんな金足農業が今回、春夏連覇を狙う大阪桐蔭と優勝を争うとは、誰が考えたか。

 秋田県というところは、とにかく人間が豪快というか陽気というか、東北地方でも他とは少し違うとよく言われる。人口減少率や出生率や自殺率の高さなど、何かと深刻な問題も少なくないのだが、陽気な豪快さは米どころ、酒どころの風土が作った気質だろうか。

 今回の決勝進出を、秋田の人がどれほど喜んでいるかと思い、電話をしてみた。もう、その興奮ぶりはすごい。そうでなくとも酒飲みが多いというのに、真っ昼間から祝い酒である。誰に電話しても、興奮すると方言が出るようだ。

 「あど気楽にやれでば。ナーニ、負げでも準優勝旗持って来るなだべ。有難(ありが)でな」

 「第1回で秋田中学が決勝さ出で、100回でまた秋田だべ。それだげで十分だでば」

 「佐竹(敬久)知事さ頼んで、決勝の日だば全県休日にして欲してな。誰も仕事さならねんだがら、全県休めどてみんな言ってる。もし優勝したら、8月21日は毎年、県民の祝日だな」

 「ま、まっさが(まさか)東京の日大のわらしがた(部員たち)、ぜごの子さ負げるど思ってねがったべ(田舎の子に負けると思ってなかったでしょう)」

 毎回の勝利コメントを聞いても、非常に謙虚な中泉監督。そして連日、あれほどの力投を続けながらも、まったく傲慢(ごうまん)さのない吉田輝星選手、ここぞという時に適打、好守の部員たちが作るチームである。

 豪快で陽気な秋田人気質を全開にして、天下の大横綱に挑んでほしい。もともと、立ち合いの変化だの張り差しだのをやるチームではないが、これまでの9人野球こそが力なのだ。 (脚本家)

 ◆内館 牧子(うちだて・まきこ)1948年(昭23)9月10日生まれ、秋田市出身の69歳。武蔵野美術大学卒業後、約13年のOL生活を経て88年に脚本家デビュー。好角家としても知られ00年から約10年にわたり、女性初の横綱審議委員会審議委員を務めた。代表作はNHK連続テレビ小説「ひらり」、大河「毛利元就」など。

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