ASKAが訴える危機感 聴き放題主流で「このままではアーティストが食えなくなる」

[ 2018年7月14日 09:50 ]

インタビューに応えたASKA(撮影・沢田 明徳)
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 ASKA(60)をインタビューした。1979年のデビュー以来、スポーツ紙の単独インタビューを受けるのは初めてという。覚醒剤事件のことやプライベートについてどこまで聞かれるか不安はあったと思うが、冒頭からサッカーW杯の話題で盛り上がり、表情は緩みっぱなし。事件や私生活のことを自分から切り出すなど、全てをさらけ出してくれた印象だった。

 音楽の話題は熱が入った。高音質の「ハイレゾ音源」を普及しようと、昨年10月に立ち上げたのが音楽配信サイト「Weare(ウィアー)」。一般的に1曲500円以上するハイレゾ音源を、安価な280円で配信することで広めようとしているが、狙いはこれだけではない。

 音楽の聴き方がCDから配信、配信から定額聴き放題の「ストリーミング」に移りつつある中で、アーティストへの実入りは確実に減ってきており、ASKAは「このままではアーティストが食えなくなって減っていく」と危機感を訴えた。

 「ストリーミング自体は時代が生んだものだし、否定はしない。聴き放題だから、リスナーがいろんなアーティストに触れることができるというメリットがある。でも、アーティストは全ての曲を聴き放題で発信したら、曲の製作費に見合うだけの収益が入ってこないのが実情。今はそれを補うためにライブのチケット代をどんどん上げているけど、近く限度が来るだろうし、全てが頭打ち。どうすればいいかって考えた時に“ちゃんとアーティストに還元されるべきだ”って思ってウィアーを立ち上げた」

 ウィアーでは経費などを差し引いた分をアーティストに還元するという。特に若いアーティストが、こだわった音作りができるような環境を整えたいという。ストリーミングは「宣伝のツールとして使えばいい」と進言し、こう将来を予見した。

 「リスナーはストリーミングで“この曲いいな”と思って、その曲をハイレゾ音源で聴く。スタジオでレコーディングしている音に近いのがハイレゾのすごさ。本物の音に触れられるから、リスナーがそのアーティストを見極める判断基準になる。アーティストは収入が増えて、次の曲もこだわって音作りができる。こうやっていい循環が生まれるんだ」

 さらにASKAは「これだとCDは売れなくなってCDショップはつぶれちゃうと思うでしょ?いやいや、CDショップは2、3倍でかくなりますよ、僕の構想の中では。また今度お話しします」と付け加えた。

 事件で大手レコード会社との契約が切れ、個人で動くしかなくなった。ブログでファンに直接発信し、これまで顔を出すことはなかった打ち合わせなどにも積極的に参加している。環境の変化ゆえか、1作に1カ月かかることもあった作詞も「4時間かからなくなった」といい、充実している。

 音楽のこともW杯のこともプライベートのことも、とても生き生きと話す姿が印象的だった。新たな環境に置かれたASKAが一旗揚げそうだ。

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2018年7月14日のニュース