「真田丸」3D地図が話題 「信長の野望」とタッグの意図 制作に約1カ月

[ 2016年1月23日 08:00 ]

話題を呼んでいる大河ドラマ「真田丸」の3DCG地図(C)NHK

 NHK大河ドラマ「真田丸」(日曜後8・00)に登場する3DCG地図が話題を呼んでいる。歴史シミュレーションゲームの元祖「信長の野望」とタッグ。戦国時代の勢力関係などを分かりやすく表している。1回の地図を制作するのに約1カ月かかる力作で、仕掛け人の清水拓哉プロデューサーは「新しい映像表現で、歴史状況をちゃんと伝えたかった」と企画意図を説明した。

 第1話の終盤。真田 信幸(大泉洋)信繁(堺雅人)の兄弟が、新府城から父・昌幸(草刈正雄)の待つ岩櫃城に向かうことを説明するシーン。「37里、歩いていけば3日の行程」というナレーションとともに、3DCG地図で新府城―岩櫃城のルートが関東平野から日本海・佐渡島を含んだ“引きの絵”で示され、その距離感、山を越える困難さが一目瞭然。 斬新な表現は「分かりやすい」と、たちまち評判になった。

 清水プロデューサーが大河ドラマに携わるのは「新選組!」(04年)「風林火山」(07年)「江~姫たちの戦国~」(11年)「八重の桜」(13年)に続き、5作目。「作品を楽しんでいただく上で、大河はどうしても歴史状況を説明しないといけません。その部分の表現が今までの方法で十分だったかという反省は自分の中にありました。歴史状況はちゃんと伝えなければいけないと思っていました」。例えば、武将がどこからどこへ出陣したという時、従来は行軍する映像にナレーションをかぶせるなどしたが、視聴者に実感として伝わっていたか。

 新しい映像表現を模索する中、ゲームにたどり着いた。大河ドラマと通じるのは、やはり「信長の野望」。1983年に第1作が発売されてから30年の歴史を誇る。

 「僕がプレーしたのは2Dの頃ですが、最新作は日本全図から城のアップまで寄り引きが可能。しかも、それをコントローラーで自由に動かせることにビックリしました。物語の舞台となっている場所が『日本のあの辺なのね』と、自分の住むところとの関係性において地続きで分かれば、より興味を持っていただけるんじゃないかと。そして『信長の野望』は、言葉だけだとイメージしにくい大名たちの力関係が、それぞれの領土の広さというビジュアルで一目で分かるところが凄い。武田家が滅亡して信濃が奪い合いの場になる中に小さな真田家がいるという物語を描く上で、これはうってつけだと思いました」

 早速「信長の野望」を手掛けるコーエーテクモゲームスにオファー。ゼネラル・プロデューサーのシブサワ・コウ氏が技術提供・監修を行うことが決まった。

 具体的には、最新作「信長の野望・創造」の「フル3D全国一枚マップ」のCG技術を使用。ただ、これをドラマ用に“変換”するのが一苦労だった。清水プロデューサーは「ゲームであれだけ自由自在に地図を動かせるのだから、ドラマの編集ソフトでも簡単に同じようにできると思っていましたが、僕がコンピューター素人で、完全な読み違いでした」と苦笑いした。

 まず「信長の野望」の地図データが非常に重い。解像度を粗くし、データを軽量化。操作をしやすくしてから、清水プロデューサーとオペレーターが大まかなカメラーワークを構築。最終的な動きは、演出の木村隆文氏ら監督と相談して決まる。

 「ゲームの巨大なデータをドラマ表現に合う動かし方にするために、技術的に超えないといけないハードルがあって。『信長の野望』チームには、テクニカルなアドバイスを頂いています」

 次に織田、徳川、北条、上杉などの勢力図を色分けするが「『今回は日本地図のこの範囲が映ります。この年のこの月の各武将の勢力範囲はどうだったんですか?』と、時代考証の先生に白地図に色を塗っていただきます」。それをデータに反映し、山肌・道・雲・海などの細かい質感を加え、本来の巨大なデータ量の地図が完成する。

 長くても10秒という「1回の3DCG地図表現」を制作するのに、要する時間は約1カ月。「映像に地図を入れ込んだ時に『あまりよくないね』ということもあり、その時は作り直します。地図の部分だけでは成立しているように見えても、実際、その前後に役者さんがどういう芝居をしているか。『この流れだと、ここでフォーカスするのはこの話。となると、地図の表現はこうじゃない』と。ギリギリまで直すこともあります」という途方もない作業。第1話に3DCG地図は3回登場したが「最初に出したもので演出が固まるので、何度もやり直しました」と制作には半年以上かかった。

 台本上は「立体地図」と書かれている。「ある回は、3DCG地図をたくさん使う台本で『これ、困ったね』と。その時は緊急制作態勢を組みました」と笑いながら明かした。

 「50年以上の伝統がある枠とはいえ、常により新しくという不断の努力はしていかないといけない。視聴者の皆さんに分かりやすく伝えないといけないと努力したので、そこを評価していただいたのは、うれしく思います」

続きを表示

2016年1月23日のニュース