水木しげるさん 出征前年の手記見つかる、やりきれない心情吐露

[ 2015年6月2日 12:06 ]

水木しげるさんが出征前に書いた手記

 漫画家水木しげるさん(93)が、太平洋戦争に出征する前年に書き残していた手記が見つかったことが2日、分かった。

 「ゲゲゲの鬼太郎」をはじめ妖怪漫画で知られる水木さんは、「総員玉砕せよ!」など南方での戦争体験を基にした作品も多い。手記には、死の恐怖に直面して揺れる心境がしたためられている。

 手記は5月26日、長女で水木プロダクション社長の原口尚子さんが東京都調布市にある同社事務所で昔の手紙を整理していた際に、引き出しの中から見つけた。

 水木さんは1942(昭和17)年に徴兵検査に合格し、翌年に南方の激戦地へ出征した。A4サイズの400字詰め原稿用紙38枚で、記された日付などから、42年11月ごろに書かれたとみられるという。

 手記で水木さんは「毎日五萬も十萬も戦死する時代だ。(略)今は考へる事すらゆるされない時代だ」と出征前のやりきれない心情を吐露。また「心の底には絵が救ってくれるかもしれないと言ふ心が常にある」ともつづられ、戦中も好きだった絵が水木さんのよりどころとなっていたことが分かる。

 原口さんは「死の不安を思い悩む中で、自分とは何か、何をやりたいのかを突き詰めている。今の水木らしさ、根幹が見える」と話している。水木プロは、近く公開を予定している。

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2015年6月2日のニュース