陣内孝則 父で演じるたけしの父 最近似てきた…“大川のJB”

[ 2014年12月28日 11:40 ]

黒縁メガネをかけてインタビューに応じた陣内孝則

 俳優の陣内孝則(56)が、年明けから再び“菊次郎”になる。ビートたけし(67)の両親を題材にした人気シリーズ「菊次郎とさき」の舞台が来年1月に開幕。ペンキ職人だったたけしの父・菊次郎さんを演じるのは通算6度目だ。自身も3代続いた大工の家庭で育ち、父は役柄そっくりで型破り、そんな父に最近似てきた――はまり役の理由をひもといた。

 菊次郎さんを演じるようになって来年で14年。2001年のテレビ朝日のスペシャルドラマから始まり、03~07年の連ドラ3作、12年の舞台第1弾とシリーズ全てを担ってきた。舞台開幕に向けて稽古中で「声色から何から、すぐに菊次郎になっちゃう。声も所作も癖も作ってる感じじゃないんですよ」と役がすっかり体に染みついている。

 仕事の腕はいいが酒癖が悪く、型破りな役どころ。福岡県大川市の実家は曽祖父から父の代まで大工で「職人の家の空気感はよくわかるし、親父が菊次郎にそっくりなんですよ。気が短くてよくキレるし、おふくろに暴力も振るっていたし。でも調子良く自分の姉さんに甘えたり、ひょう変の仕方が職人ならでは。喜劇的でした」と振り返る。

 「親父が競馬に行くと、当時あまり流通していなかった100円玉をポケットにチャラチャラいわせて帰って来るから、すぐわかる。家族中から“孝則、あげな人間になったらいかんぞ”って言われました」

 ただ、自身は競走馬を持つ馬主。「全く同じ人間になりました。馬、大好きになっちゃった」と苦笑。「嫌ですけど、年を取るごとに顔も親父に似てきた。前作を見た妹が“お兄ちゃん、お父さんにそっくりになってきたね”って言うんです。親父で(菊次郎役を)やってるのかなって思うことはありますよ」

 父は昨年83歳で他界。「晩年はほぼ寝たきりで、自力でトイレに行って倒れて救急車で運ばれたことも3、4回ありました。でも、おふくろに甘えたいだけ。救急車で住所や名前をしっかり答えられるので、すぐ帰される。“大川のジェームス・ブラウン”ってオレは呼んでたんです」。ステージでシャウトして倒れ込む米国の大御所ソウル歌手のパフォーマンスを引き合いに出し語られる父の姿は、チャーミングで憎めず、菊次郎によく似ていた。

 妹と弟がいる長男で、家業の4代目を期待されたが、「あの家にいること自体が嫌で、中学も越境で通ったし、高校も下宿。そこからずっと博多にいました。飛び出したかったんでしょうね」。

 博多でバンド活動をしていた時にスカウトされ、80年に「ザ・ロッカーズ」のボーカルとしてデビュー。80年代半ばからは俳優業に軸足を移した。役柄に、どこか軽妙さを漂わせるのがうまい。「お客さんが笑顔で帰れるお芝居がいい。人を楽しませたい、感動させたい、魅了したい。そういう気持ちが僕らの資本ですから、そこを忘れちゃいけないと思う」

 来年はデビュー35年。今年11月、久しぶりにバンドでライブを行い、「すごく気持ち良かった。自分の原点がよみがえりますね。MC(ステージ上でのトーク)をしても10代、20代のころに戻っちゃう。来年も機会があればやりたい」と意欲。

 映画監督としての3作目も考えている。「ジム・ジャームッシュの“コーヒー&シガレッツ”のような粋なオムニバス映画ができたらなと思ってます。俳優の場合、肉体や年齢で容貌に見合った役しか来ないけど、監督は50になろうと60になろうと青春映画を作れますからね。イメージしたことを具現化するのはすごくワクワクする」

 俳優業以外でバラエティー番組などに出演する際、ほとんどメガネをかける。このインタビューの時もバラエティーの収録を控え、黒縁メガネをかけていた。レンズはない。「シャイなんですよ。仕事とか外では明るくしているけど、家では黙ってジトッとしてますから。他人にならないと仕事ができないところがある。自分じゃない自分を演じるためにメガネをかけています」

 シャイで繊細なのに、サービス精神旺盛でお調子者。「大川のジェームス・ブラウン」のDNAを強く感じた。

 ≪昭和30年代が舞台≫「菊次郎とさき~北野家の逆転!?金メダル狂騒曲!~」は、東京五輪開幕に沸く昭和30年代の東京の下町が舞台。「現代は情報や物が豊富だけど、逆に失ったものが多い。昭和30年代にあった濃密な近所づきあいや家族の絆が見える作品です」と魅力を解説した。1月9~18日、東京・EXシアター六本木で。問い合わせはキョードー東京=(電)0570(550)799。

 ◆陣内 孝則(じんない・たかのり)1958年(昭33)8月12日、福岡県生まれ。82年に映画「爆裂都市 BURST CITY」で俳優デビュー。87年の映画「ちょうちん」でブルーリボン賞主演男優賞を受賞。主な出演作は、フジテレビ「愛しあってるかい!」(89年)、「眠れる森」(98年)など。映画監督作は03年「ロッカーズ」、07年「スマイル~聖夜の奇跡~」。

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