なすび 3度目のエベレスト挑戦「だんだん前向きになってきた」

[ 2014年6月9日 08:30 ]

横浜市の商店街で行われた福島の物産展に登場、喜多方ラーメンをアピールしたなすび

 タレントで俳優のなすび(38)が8日、横浜市内の商店街で故郷・福島県の物産展に登場した。被災地支援の一環でエベレスト(8848メートル)登頂に挑戦し、タレントのイモトアヤコ(28)らとともに注目されたが、4月末に起きた大規模な雪崩の影響で断念した。この日、復興支援活動を再開。3度目のエベレスト挑戦に「だんだん前向きになってきた」と意欲を見せた。

 横浜市鶴見区の商店街で開かれた、福島の名産品を販売する小さな催し。特徴的な細長い顔でニカッと笑い、喜多方ラーメンを手に声を張り上げると、多くの買い物客が足を止めた。

 5月16日に帰国してから3週間、傷心のなすびは故郷の福島にいた。登頂資金約600万円の多くが募金のため「申し訳なくて、消えてしまいたいと思った」と落ち込んだ。だが気持ちの整理はついた。イベント前日の今月7日、帰京した。

 東日本大震災後、被災地の復興支援に尽力してきた。毎月のように福島に足を運び、ガレキ撤去などのボランティアに参加。福島の物産展などで各地に足を運んだ。活動を続ける中で感じたのが“間接支援”の必要性。震災から3年が過ぎ、風化の危機感も感じている。「義援金を送り、県の生産物を買ってもらうなど“直接支援”と並行し、今は被災者を勇気づけ、県外の人が震災を考えてくれる活動が必要な段階」との持論がある。

 エベレスト初挑戦は昨年。「世界一高い場所から、福島の人を元気づけたい。世界中に福島を知ってもらいたい」という思いからだった。県民のメッセージが書き込まれた大きな旗を持参。出会った世界の登山者に、福島への応援を書き込んでもらった。その旗を山頂で振りたかった。だが初の挑戦は、天候悪化などで残り標高100メートル地点で断念した。

 昨秋に5145メートルのスリヤピーク(ネパール)に登頂するなど、今年はみっちり体力アップして臨んだ。それだけに「体力的には前回より楽に進めていた」と悔しさが募る。2度目の挑戦はベースキャンプのある約5300メートル地点で終わった。

 3度目の挑戦は「お金を出してもらって2度失敗。簡単に言えない」と“白紙”を強調。ただ帰国後、福島で元気をもらった。「自分に勇気づけられたという方もいて。ありがたい話。帰国した時は二度とできないと思ったけど、少しずつ前向きになってきた」。慎重に言葉を選んだが、意欲がにじんだ。なすびによるとネパール政府は、今年得た入山資格を5年間有効とする特別措置と、1チーム200万~300万円とされる入山料の免除を検討しているという。「来年になるか5年後になるか、分からないけど…」とも話した。

 懸賞金のみで生活するテレビ番組の企画でブレークした。「懸賞生活は今も僕を支えている。登山は(番組のように)ドッグフードを食べなくていいし、一人じゃない。僕は弱者で、マイノリティーな人間だからこそ、人を元気づけられるかもしれない」と力を込めた。

 ▽エベレストの雪崩事故 ネパール側の南東稜(りょう)ルートで4月18日、ネパール人のシェルパらが雪崩に巻き込まれ、16人が死亡、多くの負傷者が出た。死者数としては過去最悪。シェルパらは政府からの犠牲者への補償金が少ないと反発。登山拒否の動きが広がり、5月のベストシーズンに照準を合わせていた多くの外国人登山者が、中止を余儀なくされることになった。

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2014年6月9日のニュース