着物なのに跳び上がりそうに…黒木華「小さいおうち」で銀熊賞

[ 2014年2月17日 05:30 ]

第64回ベルリン国際映画祭で最優秀女優賞を受賞した黒木華(右)をたたえる山田洋次監督

 第64回ベルリン国際映画祭コンペティション部門の授賞式が15日(日本時間16日)開かれ、山田洋次監督(82)の「小さいおうち」に出演した黒木華(はる、23)が、最優秀女優賞(銀熊賞)に選ばれた。日本人の同賞受賞は4人目。トロフィーを受けた黒木は「山田監督のおかげです」と笑顔であいさつ。客席の山田監督は目に涙をためて拍手を送った。

 「ハル・クロキ!」。最優秀女優賞のアナウンスに、黒木は「え?」とびっくりした顔で客席から立ち上がった。会場からの大きな拍手に両手を合わせて感謝を示し、目の前に座っていた山田監督と握手を交わした。

 緑色の着物姿でステージへ。銀色に輝く熊のトロフィーを受け取ると「まさかこの場に立てるとは思っていなかったので、ドイツ語をもう少し勉強しておけば良かった」と笑顔でスピーチ。「山田監督のおかげです。感謝します」。トロフィーを掲げると、山田監督は涙ぐみながら拍手を送った。

 共同電によると、授賞式後の会見でも、「着物なので、うまく動けないですけど、跳び上がりそうになりました」と興奮冷めやらぬ様子。「作品が評価されてのことだと思うので、私は地道に頑張らなきゃいけない。監督のおかげだし、(映画の)タキちゃんという役をやらせてもらってラッキーだと思います」と話した。

 黒木が演じたのは、昭和初期の中産階級の家庭に住み込むお手伝いさん。着物とかっぽう着という姿で、つつましく生きる昭和の女性を体現した。山田監督は「あの時代の地方出身者の女性を、今の若い女優さんで演じられる人は少ないのでは。彼女は見事に応えてくれた。日本一ですよ」と賛辞を贈った。

 黒木は大学時代に野田秀樹氏(58)の舞台に出演し、女優として活動を開始。昨年は4本の出演映画が公開され、第56回ブルーリボン賞ほか、多くの映画賞で新人賞を受賞し、注目を集めている。

 山田監督から「僕の手の届かない女優さんになるんじゃないかな」と冗談まじりに言われた黒木は「いやいやいや、また作品に呼んでください」と恐縮。互いに「どうぞよろしくお願いします」と頭を下げ、報道陣やスタッフを笑わせた。

 ベルリンで日本人が最優秀女優賞を受賞するのは、左幸子さん(64年)、田中絹代さん(75年)、寺島しのぶ(41、10年)に続いて4人目。山田監督作品がコンペで主要賞を受賞するのは、5回目の挑戦で初めてとなった。

 ◆黒木 華(くろき・はる)1990年(平2)3月14日、大阪府生まれ。10年、NODA・MAP番外公演「表に出ろいっ!」ヒロインオーディションに合格しデビュー。11年に「東京オアシス」で映画に進出。13年に「シャニダールの花」で映画初主演。同年のフジテレビドラマ「リーガルハイ」ではヒッピー風ファッションの弁護士を好演した。次期NHK連続テレビ小説「花子とアン」に主要キャストで出演予定。

 ▽ベルリン国際映画祭 フランスのカンヌ、イタリアのベネチアとともに「世界三大映画祭」と称される。1951年から開催。最高賞は市のシンボルのクマから名付けられた「金熊賞」で、日本映画ではこれまでに「武士道残酷物語」(今井正監督)、「千と千尋の神隠し」(宮崎駿監督)が金熊賞を受賞している。

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