[ 2010年12月11日 06:00 ]

ヤルヴィは聴衆の楽しませ方も上手かった。(C)Mark_Lyons

 アンコールはブラームスのハンガリー舞曲5番とシベリウスの「悲しきワルツ」。1曲目では抑揚を思いっきり誇張し、濃厚な演奏で観客を湧かせ、2曲目ではしみじみ聴かせるという心にくい変化でした。

 私は当初、ドイツ・カンマー・フィルの鋭敏な音で生の第3番を聴くことは、ひょっとすると自分の心にそっとしまってあるパンドラの箱を開けられてしまうかもしれないとの恐れを抱いていました。ヤルヴィのシューマンへのアプローチに関しての説明、「極端な感情の表出を厭わず、そのコントラストを誠実になぞらなければいけません」という言葉が私をさらにハラハラさせました。しかし、実際のところヤルヴィの音楽はとことんまで旋律やリズムにのめり込むことが出来、シューマンの突き抜けた感性を最大限に楽しませてくれるものでした。
 コンシェルジェも大きく心を揺り動かされたようです。
 「私が聴いた第4番、第1番の公演も、作品に新たな息吹が吹き込まれたように感じるほどの斬新さと生命感に溢れたものだった。驚いたのは、楽員ひとりひとりがヤルヴィの意図に共感し、能動的にシューマンの実像を体現していたことだ。その徹底ぶりは目を見張るべきもので、細かいパッセージに至るまで徒や疎かにされる場面は一切なく、完璧に近いほどの意思統一が行われた上で作品に相対していた。小編成の室内オーケストラながら音楽の広がりや奥行きが余すところなく表現されていた」。

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2010年12月11日のニュース