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バイロイトを気に入ったワーグナーは市内に自宅も建設し「バンフリート館」と名付けた。現在はリヒャルト・ワーグナー記念館として一般公開されている。　※写真はすべて新国立劇場提供、舞台写真は三枝近志撮影

＜第2幕＞

◇第1場◇
「憎悪の動機」を扱った陰鬱な雰囲気の28小節からなる短い前奏の後、幕が開くとギービヒ家でハーゲンが柱にもたれかかり、まどろみながら見張りを続けている。そのハーゲンの前に父アルベリヒが現れる。まどろむハーゲンの夢の中の出来事なのか、それとも現実なのか定かではない。アルベリヒは「恨みとねたみこそが、我々に共通するエネルギーである」と言い、ハーゲンに世界を征服するために指環の奪還を誓わせようとする。「呪いの動機」や「指環の動機」とともに「殺人の動機」が何度か現れては消えていく。ハーゲンは心配無用だと答える。
◇第2場◇
クラリネットを導入に8本のホルンの和音進行で夜が白々と明けて行く様子が巧みに描かれた間奏。夜明けとともにジークフリートが「角笛の動機」をバックにギービヒ家の館に帰還。ジークフリートはブリュンヒルデの拉致がうまくいったことを誇らしげにハーゲンに話す。一方、ブリュンヒルデと一夜を共にしたのではないかと早くも嫉妬心を燃やすグートルーネ。ジークフリートは「東と西の間には北があるように…」などとおかしな言い訳をして言いくるめてしまう。本当にこの夜、２人の間には何もなかったのか、観客側も思わず疑ってしまうシーンだ。
◇第3場◇
ハーゲンが「ホイホー！」と大声で連呼しギービヒ家の軍勢や家臣を呼び集める。ハーゲンの呼び掛けにシュテーアーホルン（野牛の角笛）の荒々しい響きが呼応する。舞台上には大勢の人が集まり活力ある動的展開に。ここで４部作を通じて初めて合唱が登場する。ハーゲンは婚礼のための招集であることを告げ、これを聞いた家臣たちは陽気に歌い出す。歌のやり取りの中で、フリッカをはじめ「ラインの黄金」に登場した神々たちの名前が挙げられる。ここでのハーゲンはおどけた調子で、１９世紀後半のドイツ・オペラの中では珍しいバスのトリルを披露する場面も。次第に合唱は「結婚の呼び声の動機」を高々と歌い上げる。
◇第4場◇
グンターとブリュンヒルデが館に到着し、家来たちが出迎える。グンターは2組の結婚式を挙げることを宣言する。憔悴した様子のブリュンヒルデ。館の中でジークフリートの姿を見つけ、愕然とする。背後で「呪いの動機」。もちろん、ジークフリートは薬によってブリュンヒルデのことを忘れているので彼女の驚く姿をうつろな眼差しで眺めている。さらにブリュンヒルデはグンターに奪われたはずの指環をジークフリートがはめていることを見つけさらに驚くと同時に怒りがこみ上げてくる。音楽は「憎悪の動機」「ラインの黄金の動機」。
「これは欺瞞だ！」と激しく詰め寄るブリュンヒルデ。彼女とジークフリートの言い合いに割って入り、火に油を注ぐようにし向けるハーゲン。家臣たちの前で面目を失うグンター。いきなりの異様な事態に驚く家臣たちも絡んで劇的緊張が高まっていく。
ジークフリートはハーゲンが突き出した誓いの槍に手を当て、自身の潔白を宣誓する。バックでオーケストラは「贖罪の動機」を演奏する。そこにブリュンヒルデが割って入り、ジークフリートと同じ旋律に乗って激しい口調で、その言い分を真っ向から否定していく。家臣たちは騒然となるが、ジークフリートは「この女は正気ではない。女と争うなら進んで身を引く」と苦しい弁明をしながら婚礼準備のために一同を引き連れてその場を去っていく。喧噪が去りハーゲンとグンター、ブリュンヒルデの３人が残っている。
◇第5場
　呆然と立ち尽くすブリュンヒルデにハーゲンが近づく。ハーゲンは自分の槍にかけて誓ったブリュンヒルデの言葉は真実であり、ジークフリートへの復讐を手伝うと申し出る。ブリュンヒルデはハーゲンには無敵の英雄であるジークフリートを倒すことは不可能だと言う。ジークフリートはブリュンヒルデの愛撫を受けて不死身になったことを明かす。ハーゲンはあきらめずに言葉巧みにジークフリートの弱点を聞き出そうとする。怒りで正常な判断力を失ったのかブリュンヒルデはついに敵に背中を見せるような臆病なまねは決してしないジークフリートの背中は愛撫していないことを告白してしまう。ハーゲンはグンターの名誉を守るためには「ジークフリートの死」しかないと言い出して、グンターも鼓舞しようとするが、彼は妹のことを思いジークフリートの暗殺を躊躇する。
ハーゲンはなおもジークフリートの持つ指環を手に入れれば、世界を支配できるとそそのかす。ついにグンターもジークフリート殺害に同意してしまう。２人はジークフリートを狩りに呼び出して、背中を槍で突くことにする。復讐を誓うブリュンヒルデとグンター、２人を利用して指環を奪おうとするハーゲンによる三重唱。音楽は「誓いの動機」「贖罪の動機」「苦痛の動機」を繰り返す。そこに、「結婚の呼び声の動機」とともに館からジークフリートとグートルーネの婚礼の行列が繰り出してくる中、再び「苦痛の動機」が鳴り響き幕となる。