侍・栗山監督「中西さんのおかげで世界一」 義父の「三原ノート」受け継いだ

[ 2023年5月19日 05:30 ]

中西太さん死去

09年、試合前に談笑する、(左から)栗山英樹氏、巨人・原辰徳監督、中西太氏
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 3月の第5回WBCで侍ジャパンを率いて09年以来、14年ぶり3度目の優勝を果たした栗山英樹監督(62)も、中西太さんの死を悼んだ。自身のバイブルとする名将・三原脩氏の野球ノートは中西さんから受け継いだもの。野球人としてのベースをつくってくれた恩人への思いを語った。

 突然の訃報を聞いて残念でならない。中西さんは野球への情熱があふれた人で私のベースをつくってくれた大恩人。最後に話したのはWBCを前にした今年1月、電話で「お前の思う通りにやるんだ、頑張れ」と励ましていただいた。お体が悪いと聞いてたけど、それが最後になるとは思わなかった。

 後で関係者から聞いた話では中西さんは「(WBCを)最後まで見てやりたいけど見てやれないかもしれん」と話されていたという。でも、きっと、中西さんら偉大な先輩たちの夢でもあった野球の本場・米国を倒しての世界一を、見届けてくれたはずと思っている。

 今回のWBCでの世界一も、全て中西さんのおかげ。今も私のバイブルとなっている名将・三原脩さんの野球ノートは、義理の息子である中西さんから受け継がせていただいた。20年ほど前、中西さんの自宅を訪れた際、引き出しから出してきてくれたのが三原さんが書き留めたノート。「こんなものがあるんだ」と驚き、感激した。野球の奥義が記されている。今年、また新たに見つかった野球ノートもコピーさせてもらい読み込み、WBCでは本当に助けられた。

 12年の日本ハム監督就任時も、中西さんから三原さんの「日々新たなり」という言葉が入ったふくさをいただき、監督室に飾らせてもらった。思えば、私がプロ入りした84年はヤクルトのコーチ。ティー打撃では教えながらどんどん近づき、ぶつかりそうになる。あれほど情熱を持って教える人はいない。どんな選手にも分け隔てなく愛情を注ぐ。「真っすぐ生きろ」と教えられ、その姿に憧れた。私が引退し、取材者としてグラウンドに行ったとき。「誰がやめていいと言った!ふざけるなッ」とこっぴどく怒られた。大した選手でもないのに、そこまで思ってくれてるんだと、本当にうれしかった。中西さんの思い、受け継いだものを、次代へ伝えていかなければいけないと改めて思う。

 感謝してもしきれない。謹んでご冥福をお祈りします。(侍ジャパン監督)

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