MLB高額契約続々、代理人スコット・ボラス氏が「スーパーエージェント」たる由縁とは?

[ 2022年12月17日 10:37 ]

スコット・ボラス氏(AP)
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 レッドソックスファンにとっては吉田正尚との契約をまとめた代理人のスコット・ボラス氏について、複雑な思いがある。ウインターミーティング中、吉田とレッドソックスが合意した日に、同球団の生え抜きで看板選手だったザンダー・ボガーツ遊撃手のパドレスとの契約もまとめていたからだ。

 15日(日本時間16日)、吉田の入団会見に出席したボラス氏はボストンの地元記者から当然そのことについて聞かれる。ボラス氏はこう説明したそうだ。「チームごとに設計図がある。判断間違いとか誤算ではなく、それぞれのチームの選択の問題だ。選手を追いかけようとする時、レッドソックスは他の多くのチームにないレベルで『マサ(吉田)』を追いかけた。そしてザンダー(ボガーツ)についても、追いかける球団によってレベルに違いがあった。この業界ではよく見ることだ」。

 吉田に熱心な球団だから、ボガーツについても便宜を図ってあげようとは考えない。ビジネスライクに別々に交渉を進める。15日のボラス氏はニューヨークのシティフィールドでブランドン・ニモ外野手の1億6200万ドルの契約記者会見に出席した後、ボストンに移動してフェンウエイパークで吉田に合流。実はその時、レッドソックスから出された食事を口に入れながら、カルロス・ロドンのヤンキースとの1億6200万ドルの契約をまとめたそうだ。会見場で吉田を挟みレッドソックスのハイム・ブルーム編成本部長と笑顔を見せていたが、同時にレッドソックスも手を挙げていたロドンの契約を宿敵ヤンキースとの間で詰めた。

 以前、ボラス氏は筆者に「私たちの仕事は、選手に現状のシステムの中でどんなオプションがあり、長期的に見てどんな選択をするのが良いかを伝え、判断してもらうこと」と説明していた。さらに「アメリカには4大プロスポーツがあって才能の奪い合いになっている。子供たちにグラブやバットを持たせるには話題性のあるスターが出てくることが肝心。そして時に契約の大きさが選手を有名にする。素晴らしい選手を安く雇えればオーナーは喜ぶかもしれないが、長い目で見ればどうなんだろうね」。そこに彼の哲学がある。ボラス代理人が「スーパーエージェント」たる由縁なのである。(奥田秀樹通信員)

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2022年12月17日のニュース