花巻東戦で伝令による11度の判定確認 「伝言ゲーム」でジャッジの説明は可能なのか

[ 2022年5月22日 18:27 ]

春季高校野球 岩手県大会2回戦   花巻東3―2一関学院 ( 2022年5月22日    八幡平運動公園 )

判定の確認と説明のために試合は12分間の中断となった(撮影・柳内 遼平)
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 今春のセンバツに出場した花巻東は県大会初戦の2回戦で一関学院を3―2で下し、準々決勝進出を決めた。降雨の中で行われた試合で12分間も中断する事態が発生した。

 花巻東が4回に2点を先制してなお、2死満塁。5番・小沢が3球目をハーフスイングし「打球」は鋭くバックネット方向に飛び、球審は「ファウル」の判定。だが、花巻東は、捕手のミットが打者のスイングしたバットに当たっていたと「打撃妨害」をアピール。打者と走者を1つ進塁させるべきと主張した。ここで4審判員は協議を開始した。

 4審判員による最終の裁定は「ファウル」の判定を変更し、「ボール」とするものだった。つまり、捕手のミットはバットに当たっておらず、また、投球もバットに当たっていなかったため、判定は「ボール」でインプレーということだ。

 満塁の各走者に1つの進塁を認め、2死二、三塁で試合は再開となった。だが、これに一関学院側は納得しなかった。球審が「ファウル」をコールした時点で「ボールデッド」となり、守備側はプレーする機会もなく得点を認められてしまった。また、一番近くで判定した球審のジャッジを変更してしまったことも不信感を強めた。

 一関学院が送った伝令は球審に「判定の確認」を行った。その数なんと11回。伝令を通した監督と球審の「伝言ゲーム」は降雨の中、繰り返し行われた。11年から16年までNPB審判員を務めた私はシステム上、当然の混乱だったと考える。

 判定説明、監督への抗議対応は難度の高い審判員の仕事だ。私の現役時代は監督のタイプに合わせて臨機応変に対応を変えていた。主張を聞くことに徹した方が良い監督、規則に基づいた説明を重要視する監督、とタイプはさまざま。中断を短くするためにも最善の方法を探していた。

 ところが、高校野球ではルール上、監督が直接グラウンドに出て審判員と話をすることはできない。審判用語や公認野球規則に基づいたルールを深く理解していない「伝令」を通すと、説明した内容が正しく伝わる可能性は低いだろう。少しのニュアンスの違いが誤解を生むことも容易に想像できる。

 ボランティアで審判員を務めて野球界を支えているアマチュア審判員のジャッジを責めるべきではないと思う。アマチュア球界では審判員のなり手が年々少なくなっているという。現場の審判員のために、少しでもジャッジしやすい環境を整えることが急務だ。(柳内 遼平)

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