ロッテ投手コーディネーター&侍J投手コーチ 吉井氏から教えてもらった「中継ぎは降格じゃない」

[ 2021年12月22日 13:24 ]

ロッテ・吉井コーチ
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 ロッテ・吉井理人投手コーチが、来季からフロント部門に新設されたピッチングコーディネーターに就任することになった。

 吉井コーチが現役を引退し、08年から日本ハムで投手部門を担当したコーチ1年目から担当記者として接し、いろいろなことを教えてもらった。

 記憶に残るのは、先発投手が調子上がらずに、中継ぎとしてブルペン待機することになったときのことだ。「なぜ、中継ぎ降格なのか」と聞くと、「先発が中継ぎより“えらい”わけではない。降格でなく、配置転換だよ」と教えてくれた。

 当時も投手陣の先発、中継ぎ、抑えという分業はあったが、先発投手が完投することは今よりも多かった。世間的には、先発できない投手が、中継ぎをするといったイメージも強かったと思う。

 ところがメジャーを経験し、吉井コーチ自身も先発、セットアッパー、クローザー、さらにはロングリリーフもこなしている。中継ぎの重要性、難しさ、さらには先発ができるから、中継ぎで結果を残せるわけでもないことを、丁寧に話してくれた。これまでの認識を改めるものとなった。

 15年前に比べ、最近は中継ぎのスペシャリストも増え、一般的にもブルペンの重要性が認知されてきたが、当時はそんな先入観が強かっただけに、とても勉強になった。個人的にはそれ以来、投手の役割によって「降格」という言葉は使っていない。

 これは打線にも当てはまる。打撃不調で4番から8番に替われば、確かに降格かもしれないが、「4番」から「3番」、「3番」から「2番」など役割が変わるだけのことも多い。

 吉井コーチからは「先発投手は、その試合の王様」「1軍投手コーチはベビーシッターみたいなもの」というフレーズもよく聞いた。

 この二つには似たような意味が隠されている。「王様」とは、その日の先発投手には、試合前から徹底的に気分よくなってもらうという作戦だ。

 「先発には長い回を投げてもらわないと、チーム自体が一年間もたなくなる。だから、その日の先発には気分よくやってもらうのが一番」

 では、「ベビーシッター」とは、どう意味か。

 「2軍の若い選手には技術的指導も必要だが、1軍コーチは(試合に勝つために)選手の機嫌をとることが大事」

 愚痴や悩みを聞いて、「そやな、そやな」と同意してあげる。選手の不安や不満を取り除くことで、マウンドでパフォーマンスを発揮してもらうのだ。

 日本ハム、ソフトバンク、ロッテでコーチを務め、試合後には若手とミーティングすることが、日課だった。これまでダルビッシュ、大谷、千賀ら大物を見守ってきたが、ロッテでは佐々木朗、小島、佐々木千らを羽ばたかせた。

 新たに侍ジャパンの投手コーチにも就任する。日本ハム時代にともに戦った栗山監督と、再びタッグを組む。新たな職で、今度はどんな手腕を発揮するのだろうか。また、じっくりと話を聞いてみたい。(記者コラム・横市 勇)

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2021年12月22日のニュース