「チームが強い時は打順が固定」は本当か? 阪神ファンが全公式戦1万904試合を調べた結果が興味深い

[ 2021年12月22日 08:00 ]

大森正樹さん作成の「タイガースカレンダー」(裏)

 チームが強い時は打順が固定されている――と言われる。本当だろうかと、阪神ファンの大森正樹さん(54=芦屋市・会社員)は阪神の全公式戦1万904試合の打順を調べあげ、手製カレンダーで結果を公表した。おそらく過去に例のない調査から、興味深い傾向が浮かび上がった。 (編集委員・内田 雅也)

  ◇  ◇  ◇

 今のプロ野球初年度の1936(昭和11)年から今年まで、阪神が公式戦1万904試合を戦い、打順は9214通りもあった。1度しかなかった打順は8175回もあった。毎日変わる9番投手を除く1~8番でみても6506通りある。

 「打順は変わるものなのですね」と大森さん。「打順パターンに関する文献は見たことがなく、それならと自分で調べてみました」。阪神全試合の打順や成績などをエクセルに打ち込んであり、シーズン中も毎日更新。今回の調査に役立てた。

 シーズンごとにみてみると、打順パターンの数とチーム成績は見事に反比例していた。強い時はパターンが少なく(打順が固定)、弱い時はパターンが多かった。最下位だった2000年(野村克也監督)は136試合で135通り。同じ打順は2試合だけだった。

 優勝した85、2003、05年や、2位だった08、10、14年もパターンは少なかった。

 矢野監督となってから1~8番で88通り→69通り→66通りと年々パターンが減少しており「チームは上向きと理解できます」。

 打順を多い順にみると、1~9番で呉、金田、別当、藤村……並ぶ48年「ダイナマイト打線」の19回が最多。1~8番では赤星、関本、シーツ、金本……の06年で46回だ。今年は快調に首位を走った前半戦でほぼ固定された打順が16回(歴代21位)。「維持できていればさらに上位に迫れた」が後半戦は打順編成に苦しみ、優勝も逃した。

 3~5番のクリーンアップトリオで最多はバックスクリーン3連発トリオのバース、掛布、岡田の240回。シーツ、金本、今岡の224回、別当、藤村、土井垣の189回をしのいだ。1・2番コンビ最多は和田、久慈の302回だが「当時は主軸が固まらず勝てなかった」。

 これらを図表、デザイン化。2006年から毎年作成、友人や関係者に配布するカレンダー(非売品)に盛り込み公表にいたった。

  ◇  ◇  ◇

 打順を調べる過程で大森さんは「スタメンだけではこぼれ落ちる選手がたくさんいる」と途中出場選手のランキングも作成した。「ベスト10とか100とかケチなことはせず」と1軍出場全選手802人を並べた。

 最多は桧山で途中出場832試合。先発も1127試合ある。先発で、そして代打で、「2度生きた男」と名づけた。川藤624試合、八木565試合、関本550試合と上位に「代打の神様」が並んでいる。

 「意外だった」と言うのは今季限りで現役引退した俊介が580試合で歴代4位。「晩年の金本の後に代走から出るなど守備固めが多かった」

 投手では藤川球が救援763試合で、山本和541試合、福原466試合を上回り最多。先発が1度もない投手として弓長401試合、ウィリアムス372試合、渡辺亮363試合、伊藤敦312試合……と続く。

 途中から1試合だけ出場したいう選手が28人いた。映画『フィールド・オブ・ドリームス』で大リーグで1試合だけ守備に就いた経験を持つ医師、ムーンライト・グラハムのようだ。彼らもまた阪神の歴史をつくった猛虎たちだった。

続きを表示

この記事のフォト

2021年12月22日のニュース