プロ野球で導入検討「ダブルベース」って?“最後の危険地帯・一塁”交錯防止のためソフトボールで採用

[ 2021年12月22日 05:30 ]

ダブルベース
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 今季、プロ野球で画期的な新ルールの導入が検討されていたことが21日、分かった。選手の交錯による故障防止を目的とした「ダブルベース」。ファウルゾーンに走者専用の一塁ベースをもう一つ増設するルールで、既にソフトボールで採用されている。10月の実行委員会で話題に上がったが、12球団の同意が得られずに採用は見送られた。今後採用が実現すれば画期的なルール変更となる「ダブルベース」に迫った。(プロ野球取材班)

 ダブルベースは秋季教育リーグのフェニックス・リーグでの導入へ向け、10月4日の実行委員会で話題に上がったが、12球団の反応は賛否両論だった。過去に野球界で例がないため否定的な意見が多かった一方で、関係者によると「事故防止にはいいルールとする意見もあった」という。

 プロ野球は16年から本塁のクロスプレー、17年から二塁などでの危険な併殺崩しを禁止するコリジョンルール(※)が採用された。いずれもケガ防止が目的。だが一塁上は適用外となっている。打者走者が内野ゴロを放った際に駆け抜ける一塁ベース上は、送球が少しでもそれると、捕球しようとする野手と衝突する危険が増す。最後に残った危険地帯とも言え、実際に一塁上での故障事例も多い。

 事故防止は米国でも重要課題だ。マイナーリーグの3Aでは今季、各塁のベースサイズを15インチ四方(約38.1センチ)から18インチ(約45.7センチ)四方に拡大。その分だけ塁間が狭くなり、内野安打や盗塁を増やしスピーディーなプレーを促すとともに、塁上の衝突事故を減らす狙いがあった。

 プロ野球で検討されたダブルベースは3Aとは異なり、一塁ベースを従来のフェアゾーンのものと並べてファウルゾーンにも設置するソフトボールと同じルール。一塁手はフェアゾーンのベースに触塁して捕球し、打者走者はファウルゾーン側を踏むことで衝突の危険性は格段に減る。

 一塁守備経験を持つある選手は「衝突の防止には確かにいいルール」と話す。近年の例では18年4月27日、エンゼルス・大谷が、ヤンキース戦の5回にボテボテの二ゴロに全力疾走。際どいタイミングで、本職ではない一塁手ウォーカーの立ち位置も悪く、交錯した大谷はよけながら一塁ベースの右端を踏む際に左足首を捻挫し、数日間離脱した。ダブルベースがあれば確実に防げた故障だった。

 プロ野球に限らず、アマ野球でも一塁ベース上の危険は変わらない。今回の議論を機に、アマ野球界も含めて「ダブルベース」導入の機運が高まるか、注目される。

 ※<コリジョンルール>15年の米国でのルール改正にならい、16年に採用された本塁上の衝突プレーを禁じる規定。走者が守備側へ故意に接触しようとした場合にはアウトとなり、守備側が球を保持していない状態で走者の走路をふさいだ場合は得点が認められる。翌17年には再び米国のルール改正にならう形で、二塁上などで併殺を阻止するための危険なスライディングを防ぐ規定が加わった。

 ▽ダブルベース ソフトボール独自のルール。塁間が18.29メートルと野球の27.43メートルより短いため、一塁ベース上での交錯につながりやすく、衝突によるケガも発生。87年の国際ソフトボール連盟(ISF)ルール委員会でカナダから提案され、可決された。サイズは38.1センチ×76.2センチで、白色の部分をフェアゾーンに、オレンジ色の部分をファウルゾーンに固定する。打者走者は内野ゴロの時は原則としてオレンジベースを駆け抜け、守備選手は白ベースを使用。長打を狙いベースを蹴る際や、一塁走者の帰塁時には白ベースを使用する。

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2021年12月22日のニュース