【内田雅也の追球】「死んだ魚」にやられた大山 痛かった阪神初回の逸機

[ 2021年4月23日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神3-8巨人 ( 2021年4月22日    東京D )

<巨・神(6)>初回1死二、三塁、大山は空振り三振に倒れる(投手・高橋)(撮影・椎名 航)
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 阪神でもったいなかったのは1回表の逸機である。痛かったのは1死二、三塁での4番・大山悠輔空振り三振だった。

 巨人の二遊間は定位置に深く守り「1点やむなし」の守備隊形を敷いていた。ゴロが転がれば、先取点を拾えていた。

 今月11日のDeNA戦(横浜)で同じケースがあった。1回表1死二、三塁、二遊間は引いて守っていた。阪口皓亮に対した大山は追い込まれてからバットをわずかに短く持ち、低めスプリッターを軽打、遊ゴロを転がして先取点を挙げた。

 かつて金本知憲が阪神4番を務めていた当時に示した「ボテボテの内野ゴロの有効性」である。著書『覚悟のすすめ』(角川書店)に記している。<ノーアウト二、三塁のチャンスでツーストライクまで追い込まれたとする。そのとき、もし、内野がうしろに下がっていたら、意識的に内野ゴロを打てば、確実に一点が入り、二塁ランナーも三塁に進めるのである>。

 何しろ、今季の阪神は先制すれば16勝1敗。どんな形でも1点が欲しかった。先取点が奪えていれば、展開や空気も違っていたかもしれない。

 この夜の大山も追い込まれた後はゴロも頭に描いていただろう。巨人先発の左腕・高橋優貴に、1ボール2ストライクからスクリューボールに食らいついて、ファウルした。続く球もスクリューで、今度は鋭く沈んでワンバウンド、バットに当たらなかった。

 スクリューは左投手特有の球で、右打者から見れば、遠くへ逃げながら沈む。アメリカでは消え行くという意味で「フェードアウェイ」、海面や海中を漂う、死んだ魚のようだとして「デッドフィッシュ」と呼ばれる。捕まえるのは難しい。ボール球なのだが、見極めるのもまた難しい。

 体に近づく左打者には使いづらい球種だ。高橋の左右打者別被打率が右打者・077、左打者・243(21日現在)なのは、スクリューの有無に関係している。

 前回8日の対戦(甲子園)で8回無死まで零封されており、ヘッドコーチ・井上一樹も打撃コーチ・北川博敏も「右打者が何とかしなくては」と話していたと聞いた。

 高橋は結局6回6安打3点で勝利を献上した。右打者でジェフリー・マルテ2安打、北條史也が本塁打した。いずれも第1ストライクの直球をとらえた。今季2戦2敗となった高橋である。死んだ魚が来る前にたたくのは一つの攻略法になる。

 先発・秋山拓巳の思わぬ不調で2回まで6失点はさすがに重い。それでも打線は食い下がった。1回表2死満塁での佐藤輝明ライナー性中飛、3回表無死一、二塁での大山三直、4回表2死二塁での糸原健斗左飛……など、多くの快打が正面を突く不運があったのも確かだ。

 ただ、作家・伊集院静が松井秀喜や武豊が不運を口にしない姿勢をたたえ<不運と考えた瞬間から、生きる力が停滞する>と、その名も『不運と思うな。』(講談社)に記している。

 シーズンは長い。好敵手と認め、次回対戦での打倒を誓い、そして前を向きたい。=敬称略=(編集委員)

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