【内田雅也の追球】4月の夜のもどかしさ

[ 2026年4月17日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神3―4巨人 ( 2026年4月16日    甲子園 )

<神・巨(5)>5回、好機に空振り三振に倒れる森下、投手は田中将(撮影・北條 貴史)
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 負ければ悔しい。1点差ならば、さらに悔しさ募る。阪神は雨天中止をはさんで巨人に2試合続けて3―4で敗れた。

 12球団で唯一喫していなかった連敗を初めて味わった。監督・藤川球児は「特にコメントすることないですね」と表情を変えなかった。

 さらに、この甲子園での巨人戦は昨年5月から10試合続けて1点差試合となり、その間5勝5敗。伝統の一戦は紙一重の勝負が続く。今季の1点差試合は1勝4敗で悔しい敗戦が相次いでいる。

 この夜は巨人先発の田中将大を打ち崩せなかった。6回7安打で3点なのだが、佐藤輝明の本塁打を除けば、走者が得点圏に進んだのは5回裏だけだった。1死から連打で一、二塁。近本光司右前打の満塁から中野拓夢左犠飛で1点差と迫ったが、森下翔太が三振に倒れた。低めスプリッターにハーフスイングで悔しさがにじみ出た。

 田中将の甲子園での勝利は2011年以来15年ぶりらしい。高校時代の2006年夏、「ハンカチ王子」斎藤佑樹との投げ合い、決勝戦再試合からもう20年もたつのか。

 若い、今の阪神の選手たちにとっては伝説の類いだろう。当時150キロを投げた18歳の剛腕も今や37歳。変化球主体の老練の投球にかわされた。

 試合を流した前日の雨で球場前の桜はほとんど散っていた。六甲おろしが吹く、寒い夜だった。

 「4月の夜はまだ少し肌寒いね」と、あいみょんが『桜の降る夜は』で歌っている。「Ah 桜が降る夜は 貴方(あなた)に会いたいと思います どうして?と聞かれても Ah 分からないのが恋で」。実らぬ恋を歌っている。

 <スポーツは恋愛に似ている>と虫明亜呂無(むしあけ・あろむ)が『肉体への憎しみ』(筑摩書房)に記した。<精神も肉体もきわめて不安定で絶えず揺れ動いている。ただし、その不安定な二つのものが、ある瞬間だけピシッと合うと、非常にいい按配(あんばい)になる。したがって、スポーツというのは恋愛とすごく似ている>。一方、完全な勝利も確実に実る恋愛もない、と別の書にある。もどかしさや悩ましさは共通している。「Ah 分からない」のは野球も同じだ。

 藤川は「4月ですから」と言った。「どんな選手も簡単ではない」。4月の夜の寒さが身にしみた。 =敬称略=
 (編集委員)

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