【内田雅也の追球】打球を予測する投手と野手の連携 阪神「黄金期」を思わせる好投好守で零封

[ 2021年4月16日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神4-0広島 ( 2021年4月15日    甲子園 )

<神・広(5)>9回、会沢の遊ゴロを一塁転送し併殺を完成させる二塁手・山本(撮影・坂田 高浩)
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 阪神快勝の最後を飾ったのは、鮮やかな併殺だった。アメリカの野球記者なら「GEDP」と書くことだろう。「ゲーム・エンディング・ダブル・プレー」の頭文字を取った言葉で、大いに観客が沸く幕切れである。

 この6―4―3がこの夜の零封勝利を象徴していたと言える。ロベルト・スアレスが捕手・梅野隆太郎のサイン、構えたミット通り、内角に速球を投げ込み、会沢翼の詰まり気味のゴロが三遊間に転がる。中野拓夢は待っていたとばかり出足よく処理し、山本泰寛の好中継もあって併殺に仕留めたのだ。

 <野球は連携のスポーツ>と阪神での現役時代「牛若丸」と呼ばれた名手、吉田義男が著書『阪神タイガース』(新潮新書)で書いている。<一番強くそれを感じたのは投手に対してである>。

 捕手が投手に出すサインで1球ごとに守備位置を微妙に変えた。内野手は外野手にもサインを中継して伝え、シフトを変え、打球コースを予測していた。だから1歩目のスタートが良かった。

 「精密機械」と呼ばれた小山正明、渡辺省三ら制球力に優れた投手が好守を呼んでいた。小山の外角速球には右方向への凡飛、渡辺省の内角シュートなら左方向への凡ゴロ……と予測していた。<正確なコントロールを前提にした戦術である>と吉田は記している。1962、64年とリーグ優勝を果たすなど、60年代の黄金期。阪神は守りのチームだったのだ。

 もちろん、今も投手と野手は連携している。連携がうまくいくかどうかは投手による。際立っているのが、この夜先発の秋山拓巳である。

 12球団トップ級の制球力を誇る。昨季の9イニング平均与四球は0・96と1個に満たない。3四球“も”与えたが、要所では制球を間違わなかった。

 だから、走者得点圏のピンチで好守が相次いだ。3回表は左翼後方飛球をジェリー・サンズが追いつき、5回表は二遊間ゴロを中野が、三遊間ゴロを大山悠輔が好捕できたのだ。

 中野は10日のDeNA戦(横浜)で、7回裏2死一、三塁で戸柱恭孝の中前に抜けるかというライナーを事前に守備位置を変えて好捕、ピンチを救っている。予測にも優れた才能を見せている。

 もう一つ。秋山は実は「フライボール・ピッチャー」である。昨季の打球アウトで計算する「GO/AO比率」(ゴロアウトをフライアウトで割った数字)は0・82だった。1を下回れば「フライボール・ピッチャー」だ。変化球を織り交ぜ、直球が球速表示以上に伸びがあるため、凡飛が多い。

 この夜もアウトの内訳は三振4のほか、フライアウト10、ゴロアウト7だった。

 往年の小山も「フライボール・ピッチャー」だったそうだ。制球がよく、凡飛が多い。通算320勝投手に最大限の敬意を払ったうえで書かせてもらうと、秋山は小山だった。さらに書けば、中野は吉田だった。そんなオールドファンの声も聞こえてきそうな快勝劇である。=敬称略=(編集委員)

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