阪神・藤浪が体現した「エース」 偉大な能見先輩に憧れ、追いかけ、手にした231日ぶり白星

[ 2021年4月10日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神9ー2DeNA ( 2021年4月9日    横浜スタジアム )

昨年11月11日のDeNA戦後、タイガース最終登板だった能見(右)と握手する藤浪(本人提供)
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 149日前のエールにやっと応えられた。藤浪は7回4安打7奪三振2失点。231日ぶりの白星は逆襲をかける今季への力強い第一歩になった。

 「粘って、何とか立て直したかなというのが感想ですね」

 序盤の窮地を切り抜け波に乗った。3回2死満塁では宮崎を152キロの直球で見逃し三振。「こっちも腹をくくって思い切っていくしかない」と振り返った渾身(こんしん)の一球だ。4回からはセットポジションに変更して修正を試みると制球も安定。直球も終盤まで球威を維持し、121球の力投で役割を果たした。

 「タテジマのユニホームを着てる能見さんは本当に最後まで格好良かったです…」

 ずっと追いかけてきた“背中”は最後まで大きくて、熱を帯びていた。昨季最終戦だった11月11日のDeNA戦は能見の阪神でのラスト登板。先発を任され、「絶対に能見さんにゼロでつなぐ」と腕を振り5回を無失点に封じた。9回を締めた背番号14の熱投を見届けた後のクラブハウス。最初で最後の“わがまま”を言った。

 「能見さん、グラブいただけないですかね…」。とっさに出た言葉だった。

 「人にグラブをもらったことなんかないんですけどね。今しかないと。それだけ尊敬してた人。1年目から一緒にローテで投げさせてもらって、右も左も分からない自分に多くのことを教えてくれた。エースの指針は、僕の中でずっと能見さんなんです。能見さんがヒット、ホームランを打ちたいと言ってるのを横で聞いていてセ・リーグの投手とはそうなんだと思いましたし。あの年であれだけ走れるってすごいですよ。アスリートとしてあるべき姿を教えてもらいました」

 銀色のペンでサインをもらったグラブとともに、かけられた言葉がある。「晋太郎、お前らがやっていかなあかんねんぞ」。退団が決まってからの期間は、グラウンドで1対1で話す機会も増えた。

 「時代も変わる。しっかりやっていかないといけないと」。自宅で大切に保管している“黒の魂”を目にするたびに力はみなぎる。

 「開幕から勝てていなかったので、何とか勝ちを付けてもらって良かった」。この一歩を、新時代の幕開けに変えてみせる。 (遠藤 礼)

 ○…藤浪(神)の勝利は昨季8月21日のヤクルト戦以来231日ぶり。白星が付かなかった21試合の間もDeNA戦は3試合(先発1、救援2)7回を無失点と相性が良く、球団別通算でも最多の14勝(3敗)、勝率.824を誇る。なお13年4月14日、甲子園で記録したプロ初勝利もDeNA戦。先発で投げ合ったのは現役時代の三浦監督だった。

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