【阪神・矢野監督 新春インタビュー(2)】ドラ1・佐藤輝の成長期待「凡打で走る姿も格好良く」

[ 2021年1月4日 10:00 ]

<阪神・矢野監督インタビュー>〝矢野ガッツ〟の写真を前にポーズを決める矢野監督(撮影・坂田 高浩)
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 ――監督としてさまざまな経験、手応えをつんで3年目を迎えるが、方向性、やるべきことは変わっていない。

 矢野監督 自分の中でも明確にあるし、自分で言うのはなんだけど、ぶれてないつもり。選手をとがめることもしてないし、挑戦することも変わっていない。変わっていないから、スタッフから今年のスローガンでもある「挑」が出てきたところもすごくうれしい。アウトになったとしても“もっと行ってこい”と伝えているから。オレのやることは減ってきている、コーチや選手同士でやってくれるから、ほんと、うれしい。

 ――佐藤輝(ドラフト1位)について。外野はより激しい競争が生まれそうで、監督も楽しみなのでは。
 矢野監督 うん、面白いな。まず、見てみたい。実際、タイガースのユニホームを着てどうか見てみたい。サードをやりたい思いを持っていて、それ自体すごく良いことなんだけど、アイツに伝えたのは「まずは外野や」と。外野の守備ができないと打席には立てない。外野守備をやっていくよう、本人に伝えてはある。バッティングが一番の魅力で、その特長で獲った選手。でも、そこを思う存分発揮させるためにも、悠輔(大山)を動かして佐藤、とは考えにくい。そう考えると春のポジションはまず外野になる。守らせてみて、まず守れるのか。打つのがどれぐらいのレベルにあるのか見極めた中で、嘉男(糸井)から陽川、高山、中谷、井上も含めて他も外野手がいるけど、誰が勝ってくるのかを見ていくのはすごく興味がある。オプションの中で佐藤が内野をやることもあるとは思うけど、現状は外野で。1年目からガンガン打たせてくれるほど甘くないと思うし、苦しんだ分は佐藤が成長できると思うから。打ってくれたら打ってくれたでうれしい、どっちにしろ見るのが楽しみな選手ってそんなに多くいるわけじゃない。そういう選手が来てくれたんだから、オレもファンの人も楽しみにしてくれる。

 ――育てていく中で、佐藤輝は中軸を打てる打撃を崩してほしくない。
 矢野監督 もちろん、もちろん。ホームランを打てる選手って、多くいない。3割は誰もが目指せる数字だけど、それよりも長打、ホームランが佐藤の魅力。浜風がめちゃくちゃ吹いているところで放り込んでくれたら、それだけでも夢がある。佐藤にも言ったのはホームランを打って格好良いのは当たり前。これは井上にも言ったけど、違うところでも格好良いと思われる選手になってほしい。ポジションまで走って行く姿であったり、凡打で一塁まで走る姿であったり。そういうのを子どもたちが見て「うわ、佐藤ってアウトになっても全力で走るやん。よし、オレも同じように頑張ろう」となってくれたら、それは凄いこと。

 ――そういう格好良さというのは、一流選手こそが持っているものだと感じるし、佐藤選手にも大切にしてほしい。
 矢野監督 チームで大事にしていることやからね。オレも現役の時はなかなかできてなかったんだけど、辞めてからすごく大事なことだと考えるようになって。あきらめない力を蓄えるということで言うと、ダメな時にどう頑張れるかで蓄積されていくんだと思う。例えばピッチャーだったら打たれた後のバックアップを行けるか、行けないか。でもそれができれば、進塁や次の1点を防ぐことができる。そこで悔しさを一回のみ込んで足を動かすことを続けていれば、オレは力を蓄えていけると思ってて。佐藤自身にも圧倒的な数字を出す、プラスアルファの部分の魅力を持つことができれば、もっと凄い選手になれるんじゃないのかな。早く見てみたいね。

 ――佐藤輝の入団も含めて、チームはがらっと若返った。精神的な支柱というか、プレー以外で、変わりそうな感じはある?
 矢野監督 不安的な要素というか、今までは孝介(福留)、能見、球児(藤川)そういうメンバーがいて。健斗がキャプテンとして困った時に、たとえば孝介に“どうですかね?”と聞けただろうし、同じようにピッチャーも能見や球児に聞きに行く場所があったのに、それがなくなったというのはマイナス。プラスで言うと、オレは全員がキャプテンになってもらいたいし、全員が“任せる”のではなく“オレがやってほしい”わけよ。でも、(頼れるベテランが)いなかったら考えないと仕方ないし、自分たちでやるしかない。そういうところでも、そこらへん(中堅選手)が引っ張っていく構成になったから。自然にみんなが自分がアイデアだしたり、気づいてやっていってくれるプラスが、オレはあると思う。

 ――昨年は開幕2勝10敗がクローズアップされるが、そこから108試合は貯金15で終えた。はい上がった経験は今季に生きる。
 矢野監督 ほんま、アカンと思った。やばい、と。どうしよう、って。何もできない。散歩するぐらい。切り替える場所もそんなになくて。本を読むマインドにもなりにくい…。チームスローガンの「It’s 勝(笑) Time!」をオレ自身が全然できていなかった。「こんな成績で楽しめない、選手も“楽しめ”と言われてもしんどいやろうな」と。でも、それをみんなで乗り越えられたから手応えというか、健斗のキャプテンシーもあったし、一人一人の成長でね。そういうトータルですごく手応えを感じてる。

 ――糸原のキャプテンシーについて。
 矢野監督 昨シーズンは健斗がキャプテンとして、めちゃくちゃ理想に近づいてきてて。負けている時とか、良い意味でベンチでバカをやってくれる。オレはそれがすごくうれしくて。アカン時に、オレなんかはすごくションボリしてるわけ。でも健斗だけが「ハンディ、ハンディ」とか、あえて頑張ってくれていて。健斗がナゴヤドームで無死一、二塁から送りバントを失敗してベンチに帰ってきたときも、「過去は変えられない、未来は変えられる」って。オレの中で「しばくぞ、バントしてこいよ」って思いながらも、オレがいつもそうやって言っているからクスッと笑ってしまった。「お前が言うなよ!」という自分と、「健斗、ようそれ言ったな」という自分がいて。それがうれしくて。おれはそういうチームにしていきたい。そういう意味で、健斗は本当によく頑張ってくれた。今年も健斗で、もちろん良かったんだけど「健斗、名誉キャプテンな。さらに上や。マークはなくなるけど、オレの中ではM(名誉)C(キャプテン)が見えてるからな」と。

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