厚い信頼関係 原監督に最後の「恩返し」

[ 2020年10月20日 05:30 ]

岩隈引退 歴代担当記者フリートーク

19年、巨人入団会見で原監督(左)とグータッチする岩隈
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 【記者フリートーク 19年遊軍・川手 達矢】今年2月の宮崎春季キャンプ。休養日を利用して、岩隈と食事に出かけた。その最中だった。「もし、今年もダメだったら引退する。2年間もチャンスをもらえたわけだから。これ以上、球団に迷惑は掛けられないよ」と打ち明けられた。

 巨人入団後、岩隈が何度も口にしてきた「恩返し」という言葉。それは右肩手術のリハビリ中だった自分を獲得してくれた巨人と、原監督に向けられたものだった。実際、18年オフに獲得のオファーをもらった時を回想し「本当にうれしかったよ」と振り返っていた。

 今回の引退発表に向けてもそうだった。原監督から、約1週間、自らの去就を熟考する時間を与えてもらった。「本当なら戦力外。でも、そうは言わないで、最後は自分で決めさせてくれた。監督には心から感謝の気持ちでいっぱいです」。2人の出会いは09年WBC。引退取材を通し、その信頼関係の深さを感じ取った。

 《19年~20年 懸命リハビリも巨人で登板かなわず…》8年ぶりの日本球界復帰の新天地として巨人を選択。決め手は09年WBCで日本代表を指揮した原監督の「優勝するための戦力として一緒に戦ってほしい」という言葉だった。しかし17年に手術した右肩の状態は上がらず。懸命にリハビリを続けてきたが、今季までの在籍2年間で1軍登板は果たせなかった。

 ファームでは有形無形の功績があった。春季キャンプ中だった19年2月19日。ブルペン投球を終えると若手の投球練習を見守った。その場で大江、田口、桜井、鍬原らに「岩隈塾」を開講。「一生懸命やっていたので、やらせてもらいました」と変化球の握りや腕の振り方を助言した。下半身主導で体重移動する「脱力投法」を教わった大江は「とにかく凄いピッチャー。一緒にいられるだけで幸せ」と興奮していた。

 今季もネットスローや、マウンドの手前から行うブルペン投球など地道に努力を続けた。その姿は若手の手本となったはずだ。日米通算170勝の功績は決して色あせることはない。

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