記者だけじゃない ヤンキース田中も感じているリモート取材の寂しさ

[ 2020年9月21日 09:00 ]

ウェブ会議システムで会見するヤンキース・田中

 今季の大リーグは最終盤を迎えた。パンデミック下での短縮シーズン。さまざまな変化があったが、今季はメディアによる取材体制も劇的に変わった。

 メジャー取材の特徴であるクラブハウス内での対面インタビューは許されず、一貫してZoomによるリモート取材。ポストシーズンも同様で、2020年は一度も選手と顔を合わせることがないまま終わりそうだ。

 Zoomインタビューは一斉取材で他の記者と交代で質問するため、話を膨らませるのは容易ではない。慣れない形式で口数が少なくなる選手も多く、オンラインの音声が乱れることもあり、やりづらいシステムではある。ただ、メジャー7年目のヤンキース・田中将大投手は、ここでもベテランらしさ、プロらしさを発揮しているように思う。

 田中の場合は米メディア、日本メディアの2部構成で取材が行われ、佐藤芳記広報の尽力もあってやり取りは非常にスムーズだ。リップサービスを好まない選手ではあるが、かといって言葉数が少ないわけではない。投球術、課題、心を通わせているゲリット・コール投手との関係、チーム状態など、自分の言葉で丁寧に説明してくれる。深く聞き込みたい時など、同じ記者が複数の質問を畳みかけても辛抱強く対応する。

 例えば、9月11日、オリオールズ戦の登板後は――。

 「僕も日本で震災を経験しています。それと比べることではないですが、みんなのこの日に対する思いも感じます。僕自身もそういう日に登板ということで、しかもニューヨークでプレーしているわけですし、いつもと違う気持ちもありました。当時まだ子供ながらにも朝早く起きたときにテレビでニュースが流れていた、その衝撃は今でも覚えています。ここでプレーしている限り、この思いというのは、みんなと一緒です」

 01年に起こった米同時多発テロ事件に関して、こんな風に言葉を選びながら語っていた。7年という短くない時間を過ごしてきた街に対し、愛着を込めて話しているのが十分に伝わってきた。

 時間の許す日にはジョークを交えることもある。その一方、例えば移動前で時間がない時などは心得ていて、無駄なく適切な答えを返してくれる。

 筆者はMLB、NBA、ボクシングの取材でさまざまな選手のリモート記者会見に出席してきたが、対応時のバランスの良さでは田中はトップクラスではないか。高校時代から常に注目されてきた選手らしく、公式会見などフォーマルな場で話すのは上手な印象があったが、経験が生きているのかもしれない。

 ただ…そんな田中も、やはりこのリモート取材には物足りなさを感じているのだという。8月上旬、こう胸中を明かした。

 「やっぱり皆さんと会って、質問されることに対してもそうだし、僕が答えることに対して、熱量みたいなものはその現場があって伝わるものもあるじゃないですか。そういうのがないのは、やっぱり寂しいかなとは思いますね。こうやって会見する分には普通に話はできますけども、例えば、冗談を言ってもあまりよく伝わらなかったりとか。そういうのはつまんないなとは思いますね…」

 追いかけ回される時間は減り、何度も同じことを話す必要もなくなる。この方法がベターだと感じているスター選手も少なくなさそうではある。来季以降もしばらくはリモート取材が続くのではないかという危惧はメディア側にはある。

 そういった中で、田中はこのシステムを好む選手の一人ではないらしいことには多少の安心感を覚える。やはり、早く正常な現場が戻ってきてほしい。今季は仕方がないし、不平を言う時ではないのはもちろん理解しているが、選手が発する熱量を直接感じ、伝えられる日が、どうしても待ち遠しくなる。(記者コラム 杉浦大輔通信員)

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