けが乗り越え四国IL香川からヤクルト入りの歳内 常に笑顔で前向き、新天地で思う存分実力を

[ 2020年9月9日 15:12 ]

ヤクルト入団会見でポーズをとる歳内(球団提供)
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 プロ野球の担当記者は出張の多い仕事だ。1月の自主トレ取材に始まり、2月は春季キャンプ、シーズンが開幕すれば試合に合わせて全国を飛び回る生活を送るが、プライベートで国内旅行に出かける機会はほとんどない。

 賛否が飛び交った「GoToトラベルキャンペーン」。新型コロナの状況が落ち着いたら、この制度を利用してどこかに旅するのも悪くないかなと考えていた。どうせなら、これまで訪れたことない場所に行ってみたい。そんな“妄想”を膨らませていたシーズン開幕前に「いつか香川に来てくださいよ。いいところなんで。おいしいお店、探しておきます」と誘いを受けた。

 そう言ってくれたのが、四国IL・香川からヤクルトへの入団が決まった歳内宏明投手だ。聖光学院(福島)で全国制覇の夢を追いかけていた3年間、時期を同じくして私は福島支局で勤務していた。何度となく取材をさせてもらい、今でも付き合いが続いている。

 歳内が試合で投げているのを最後に球場で見たのは、現楽天・釜田佳直を擁する金沢(石川)との投げ合いの末に敗れた11年夏の甲子園2回戦。あれから9年。当時を思い出す度に、月日の流れの早さを感じる。阪神時代は映像でしか登板試合をチェックできず、久しぶりに実物のピッチングを見たいと思っていた。

 ネット上で「歳内無双」などと言われるほど、四国ILでは圧倒的な成績を残していることはもちろん知っていた。個人的に香川県は「未踏の地」ということもあり、休日を利用して歳内の登板日に合わせて弾丸一人旅を実現させるべくプランを練っていた。ところが、この旅は思わぬ形で計画倒れになった。歳内のヤクルト入団が決定。香川まで行かずとも、NPBの舞台で投げる姿を見るチャンスが訪れたのだ。

 高校時代からけがに苦しんできた。日本ハム・有原航平を擁する広陵(広島)、ヤクルト・山田哲人を擁する履正社(大阪)を撃破した2年生エースとして一躍脚光を浴びた10年夏、東日本大震災で甚大な被害を受けた福島県の代表として臨んだ11年夏も、ともにけがで100%の力を出し切れなかった。プロに入っても故障との戦いは続いた。

 それでも、歳内から後ろ向きな言葉を聞いたことはない。話せば必ず笑顔で前向きな言葉が返ってくる。壁にぶつかると、よく言っていた。「何とかなるっすよ。何とかします。頑張ります」。置かれている状況をしっかり受け止めた上で、常に前に進んできた。心優しく礼儀を重んじる好青年は、良い意味で楽天的な部分も持ち合わせている。

 7月で27歳になったばかり。もともと高く評価されていた能力を新天地で思う存分見せつけてほしい。私の初めての香川旅行は中止ではなく延期にしようと思う。歳内がNPBで大きな花を咲かせ、いつか香川でお世話になった人たちに「お礼参り」をするタイミングまで。(記者コラム・重光晋太郎)

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