年に一度の「祭り」が消えた…プロ野球地方開催34試合中止、どうなる残る5試合

[ 2020年5月24日 07:00 ]

9月の公式戦が中止になったノーブルホームスタジアム水戸(水戸市提供)
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 6月19日に開幕する見通しとなったプロ野球は、延期により今季の地方球場で行われる予定だった公式戦の開催中止が相次いだ。当初は39試合が組まれていたが、現時点で残っているのは5試合のみ。新型コロナウイルスの感染拡大は、プロの熱戦を生で見届ける数少ない機会をも奪った。茨城県水戸市と青森県弘前市で「祭り」の準備に奔走した関係者たちに、地元の思いを聞いた。(田中 健人)

 シーズン終盤、し烈なCS争いの一場面として期待満載のビッグイベントだった。茨城・水戸市民球場(ノーブルホームスタジアム水戸)は、9月8日にロッテ―日本ハム戦が組まれていた。しかし、4月13日に開催中止(ZOZOマリンへの開催地変更)が発表された。現在は高校、社会人といったアマチュア野球の大会も開催されておらず、静かにたたずんだままだ。

 水戸でのプロ野球公式戦は92年4月の日本ハム―オリックス戦以来、28年ぶりの悲願だった。ロッテ戦となれば、前身の大毎時代以来、実に61年ぶりとなる開催が、コロナ禍で幻に。水戸市スポーツ振興協会の小林哲也事業課長(53)は「高校野球の人気も高く、野球ファンが多い地域。見たい気持ちの人も多かったと思う」と地元の声を代弁した。

 同球場は18年6月にリニューアルオープンしたばかり。昨年の茨城国体や将来的なプロ野球公式戦誘致のため、グラウンド拡張やスピードガン設置などを行った。今回の公式戦は、さらなる地域のスポーツ振興の足がかりと期待されていた。試合当日には、地元飲食店などへの出店依頼を予定していた。同協会によれば、茨城国体時の11店舗以上への依頼を見込んでいたという。四半世紀以上を経て戻ってきた「祭り」を盛り上げようとしていた。

 プロ入りしたご当地選手が活躍する姿を見られるのも、地方開催のだいご味の一つだ。茨城出身のロッテ・柿沼は、水戸開催が決まった際に「その日はスタメンでマスクをかぶり、同じ茨城出身の石崎さんとバッテリーを組みたいです」と語った。故郷に錦を飾るべく、意欲をみなぎらせていた。

 30年近く水戸で開催できていなかった経緯もあり、小林課長は「県庁所在地で開催できる意味はあったのに…」と無念さは尽きない。それでも、来年以降の開催に向け「引き続き可能な限り誘致を進めていきたい」と前を向いた。

 ▽ノーブルホームスタジアム水戸 1980年に竣工(しゅんこう)し18年6月にリニューアルオープン。最大収容2万人。昨年の茨城国体・高校野球硬式の部の会場。89~92年にはセ・パ両リーグの公式戦計5試合が開催され、イースタン・リーグも行われている。

 ≪弘前市「非常にショック」≫青森・弘前市運動公園野球場(はるか夢球場)でも、6月23日の楽天―オリックス戦が中止になった。岩木山を模したスタンドを造るなど大規模な改修工事を終えた17年に県内29年ぶり、同球場では33年ぶりの公式戦を実現させて以来、昨年まで3年連続で楽天戦を開催。毎年チケットは完売し、約1万3000人が観戦する一大イベントとなっていた。

 弘前市ではオフに楽天の野球教室なども行われており、試合開催との相乗効果により、野球振興が進められている。同市スポーツ振興課の奈良岡隆介氏(44)は「1年に1度のことだったので、地元も非常にショックだが、仕方がない」と肩を落とした。

 奈良岡氏は、来年以降の誘致や開催はまだ不透明としつつも「また開催できたら、今年やれなかった分、選手には地元・東北で暴れてもらいたい」と楽天にエールを送った。コロナ禍を乗り越え、再び地元の球場に笑顔と熱気が戻る日に備える。

【19年地方開催の名珍場面】
 ☆10代で2戦連続V弾(4・16ヤクルト―阪神戦=松山)ヤクルト・村上が球団史上初となる10代での2試合連続決勝本塁打。小川監督の通算400勝(代行時代を含む)に花を添えた。

 ☆中断で傘拝借(5・18ソフトバンク―日本ハム戦=熊本)雨に見舞われた一戦で4回、ソフトバンク・牧原が自打球で一時中断。この間に日本ハム・西川が外野席のファンに傘を借りて談笑し、ソフトバンク・内川がトンボ掛けするなど場内を和ませた。

 ☆悲願の凱旋弾(5・21西武―ソフトバンク戦=那覇)西武・山川が7回に両リーグ一番乗りの20号3ラン。プロ入り後初めて故郷・沖縄での試合に出場し、詰めかけたファンに「どすこいポーズ」を披露した。

 ☆「地方の鬼」本領(6・29ヤクルト―巨人戦=秋田)巨人・山口(現ブルージェイズ)が7回無失点で8勝目をマーク。移籍後の地方球場での成績を6戦5勝とし「地方の鬼」が抜群の安定感を見せつけた。

 ☆20年ぶり日没コールド(8・28日本ハム―西武戦=釧路)試合前から小雨が降る中8回表まで進むが日が沈み、照明設備がないためコールドゲームに。99年6月20日オリックス―近鉄戦(札幌円山)以来の珍事。

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