BFJ山中正竹会長 野球の歴史を勉強する格好のチャンス

[ 2020年4月29日 14:00 ]

BFJ山中正竹会長インタビュー(2)

山中正竹会長
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 全日本野球協会(BFJ)の山中正竹会長(73)が電話取材に応じた。2回目は野球界の未来と指導者についてです。

 ―非常事態宣言は連休明けも続きそうな様相です。
 山中 この機会に、高校や大学、社会人、プロ野球の選手みんなで日本の野球の歴史をひも解いてもいいんじゃないかと思います。野球の誕生から、統制令があったり、戦争で野球が出来なかったり…。今は違うけど、昔は正しいと思われていたこととかその逆のことがあったりとか、そういう変遷の中で今日を知る。そこでじゃあそこから将来をどうクリエートしていくか。歴史という縦軸を知って、今という横軸を見つめ、未来をつくりましょう。みんなで勉強し、努力しましょうということです。指導者の野球観も間違いなく変わります。自分はこんな狭い考えの中で野球をやっていたのかと気づき、もっと勉強しないといけないと自覚できると思いますよ。

 ―現状では野球離れが進行しています。
 山中 野球界みんなでその課題に向き合っています。特に指導者の影響力は大きく“まず、指導者が変わろう、指導者が変えよう”と取り組んでいます。練習の内容や時間、選手との接し方や指導法、野球のブランディングなど旧来の負の体質やイメージは払拭され随分改善されてきました。もちろん100%じゃない。だから一緒に勉強すればいい。一緒になって変わりましょうと言うことです。私も知らないことが多い“それ何、教えて”と人に尋ねたり、本で勉強したりの日々です。

 ―しかし、きれい事だけではダメだと勝利至上主義者から指摘されるのでは。
 山中 確かにきれい事、理想を貫くのは大変な覚悟がいる。でもスポーツはその覚悟を持って臨むものなんです。だからスポーツマンは評価される。それを守り抜くためには葛藤(かっとう)があったり、精神的な強さを求められるわけですが、挑戦し続ける覚悟、品性がなければいけないんです。

 ―品性、すなわちインテグリティーですね。
山中 品性の劣化は知性の劣化を招く。知性の劣化は技の劣化を招く。昔気質の監督が「やれ!」と選手に命令しても、選手は自分で考えてやることが出来ない。知性を否定すれば、技術は向上しない。最終的には組織、チームの劣化を招く。だからスポーツは品性が大事なんです。

 ―精神的には辛いですが、この機会に意義を見出すこともできるんですね。
 山中 歴史を振り返って、もう一回スポーツマンシップを見直してみませんかということです。AC(アフターコロナ)の世界が、社会がどう変わっていくのか誰も分からない。野球も変わるのか。いずれにしろみんなでこれからの野球をつくっていきましょう。

 ◆山中 正竹(やまなか・まさたけ)1947年(昭22)4月24日、大分県出身の73歳。佐伯鶴城から法大に進み、東京六大学史上最多の48勝。住友金属監督として82年都市対抗優勝。92年バルセロナ五輪では監督として銅メダルを獲得した。94年から法大監督として7度東京六大学リーグ優勝。03年からプロ野球横浜の専務取締役。16年野球殿堂入り。全日本野球協会(BFJ)会長、侍ジャパン強化本部本部長。

 ◆インティグリティー 高潔さ、誠実さ、品性などの概念を意味する。組織を率いるリーダーに求められる重要な資質といわれる。潜在的なパワハラ、セクハラが表面化した国内スポーツ団体でも組織改革として「インティグリティーの保護・強化」が政策目標として掲げられた。

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2020年4月29日のニュース