【内田雅也の追球】育成へ、我慢の時間――連勝ストップの阪神が目指す「勝利」

[ 2019年8月26日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神1-5ヤクルト ( 2019年8月25日    神宮 )

8回1死、大山は空振り三振に倒れる(撮影・大森 寛明)
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 「石の上にも三年」という。辛くても我慢して続けていれば、報われる。あの3年には意味があるのかもしれない。

 「1万時間の法則」というのがある。勉強、スポーツ、仕事など、どんなことでも1万時間、集中して取り組めば必ず成果が出るという意味だ。

 米雑誌『ニューヨーカー』のスタッフライター、マルコム・グラッドウェルが提唱する。著書『天才! 成功する人々の法則』(講談社)でビートルズ、モーツァルト、ビル・ゲイツ……などの例を紹介している。<1万時間より短い時間で真に世界的なレベルに達した例を見つけた調査はない。まるで脳がそれだけの時間を必要としているかのようだ>。

 実際、1万時間とはどれほどの長さか。1日8時間集中するとして1250日。約3年半だ。

 この日8月25日は後に大リーグ・ヤンキースなどで活躍する巨人・松井秀喜がプロで初めて4番を打った日だ。1995年、甲子園での阪神戦だった。3年目、通算291試合目だった。

 入団時からの監督、長嶋茂雄は「松井4番、1000日計画」と長期ビジョンの育成を明らかにしていた。4番定着は翌96年だから、当初の目算通りだったと言える。

 ならば、阪神が直面している若虎育成も3年や1000日や1万時間は必要なのである。いつからなのか、集中の度合いはいかほどかといった、時間の濃淡も問われており、成功の目安は見えないでいる。

 この夜は残念な敗戦だった。先発オネルキ・ガルシア、救援ラファエル・ドリスが四死球から乱れ、ともに代打に適時打を浴びた。育成とは無縁の外国人投手が打たれての敗戦はやるせない。

 打線もヤクルトのデビッド・ブキャナンに毎回走者を出しながら6回で1点しか奪えず、3敗目を喫した。これも育成に必要な我慢なのだろう。

 ただし、松井が初めて4番を打った試合の評論(95年8月26日付スポニチ本紙大阪本社発行紙面)で西本幸雄が<「勝利より育成」という方針では若虎育たぬ>と提言している。阪急や近鉄で若手育成に定評のあった西本が言うのだから間違いはない。<勝つことを前提にしないと、首脳陣、選手ともに甘えが出る>。

 なるほど、今の阪神(フロントを含む)に伝えたい姿勢である。長旅を終え、甲子園に帰る。勝って育つ姿を見せようではないか。=敬称略=(編集委員)

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