敦賀気比の4番・木下 巧みな話術と底抜けの明るさを持つ男がみせた涙

[ 2019年8月26日 09:00 ]

<国学院久我山・敦賀気比>7回1死一、二塁、適時二塁打を放つ敦賀気比・木下(撮影・平嶋 理子)
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 当コラムでは令和最初の甲子園大会で、スポニチ高校野球取材班が印象に残った選手や大会中のこぼれ話を、リレー形式で紹介します。第3回は、チームに5年ぶり夏2勝をもたらした敦賀気比(福井)の4番・木下元秀外野手(3年)をとりあげます。

 背番号「7」の周囲には常に笑いが絶えなかった。軽妙なトークと気の利いたコメントで試合や打席内容を振り返る。大阪出身らしく、ボケとツッコミの基本を抑えたうえで“ノリツッコミ”などのテクニック?も織り交ぜる。いつも陽気に取材陣を盛り上げてくれた木下だけに、仲間を思う「涙」には心をつかまれた。

 3回戦・仙台育英戦(宮城)。3―4の9回1死一、三塁と絶好の同点機に打席は巡ってきた。しかし142キロ直球に差し込まれる形で浅い左飛。後続も倒れ、試合はそのまま1点差で敗れた。それまでの4打席は2安打2四球でこの試合、初めての凡退だったが「あの場面で打てないということは、僕の実力が足りないということ…」と唇を噛んだ。試合後の控え室では涙が止まらなかった。

 この試合、2回戦でサイクル安打を達成した3番・杉田翔太郎内野手(3年)が初回、頭部に死球を受けて交代。同じ大阪出身の「大親友であり、ライバル」ともう1度、一緒にプレーするには勝つしかなかった。2年途中から寮は二人部屋の同部屋。笑い合い、そして励まし合って高校生活を過ごしてきた。

 「すごく気が合うというか、いいヤツなんですよ」

 就寝後にいたずらで布団に潜り込まれ、眠れなくなったこともあった。NHK連続テレビ小説「なつぞら」を見てから球場入りするルーティンも、お気に入りのオフコースの楽曲の良さも分かってくれなかった。それでも“いいヤツ”であることは誰よりも知っている。昨秋に左肘を痛めて野手に専念することになったが、その過程では何度も勇気付けられた。苦手な?勉強も教えてもらった。野球道具を大事に手入れする姿、道を横断する虫を、優しく脇へと誘導してあげていた姿も見ている。思い出があふれるだけに、病院での検査を終えて終盤にベンチに戻ってきた杉田には試合後「ごめん。ホンマにありがとう…」と伝える事しかできなかった。

 甲子園大会では3試合で計12打数7安打6打点と持ち味の打力を存分に見せつけた。巧みな話術と底抜けの明るさで周囲を引き込む涙もろい男は、親友とのかけがえのない3年間を財産にプロの世界を目指す。(桜井 克也)

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