千葉県立銚子高9人の善戦を美談だけで終わらせてはいけない

[ 2019年7月12日 19:37 ]

第101回全国高校野球選手権 千葉大会2回戦   県銚子4―6千葉工 ( 2019年7月12日    ZOZOマリン )

善戦も及ばず接戦に敗れた部員9人の銚子ナイン
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 【君島圭介のスポーツと人間】試合後のロッカールームで、床にほうきをかけていたのはレギュラーナンバーを背負う選手たちだった。それもそのはずだ。千葉県立銚子高校の野球部員は9人しかいない。ユニホームを着た全員がレギュラーなのだ。

 「秋は助っ人に3人来てもらって出場したんです」

 大野友也監督が教えてくれた。バドミントン部の生徒が臨時野球部員となったという。その時点で2年生6人が全部員だった。

 今年の春になり、新入学シーズンになると、エースでもある加瀬功樹主将(3年)らが懸命に部員の勧誘に走り回った。

 すぐに2人が入部した。そして、5月のゴールデンウイーク明けに島田悠斗(1年)が入部した。

 「中学時代は野球をやっていたけど迷っていた。練習を見てると楽しそうで、先輩から“いつでも来ていいよ”と声をかけてもらったので」

 島田の加入で9人が揃った。

 だが、9人はギリギリの人数だ。夏の甲子園に向けた12日の千葉大会初戦(ZOZOマリン)では、2回途中に川和田大夢捕手(2年)が右太腿をつるアクシデントに襲われた。大野監督が攻撃中に川和田をベンチに寝かせてマッサージを続け、何とか乗り切ったが、試合後は背中に担がれてのベンチ裏に引き揚げた。

 ベースコーチも出場中の選手が立つ。攻撃で満塁になると、ベンチに座っている選手は誰もいなくなる。キャッチボールする投手とその相手も必要だから誰も休む暇はない。

 試合は初回に銚子が5連続安打で4点を先制する予想外の展開だった。だが、関東大会出場経験もある相手の千葉工業が徐々に自力を発揮し、5回に同点。8回に勝ち越され、4―6で敗れた。加瀬主将は「自分は何もできなかった。この悔しさを忘れない」と前を向いた。

 部員9人の野球部の善戦を特別な美談にするつもりはない。努力や情熱はどのチームもどのスポーツも平等だ。ただ、銚子ナインの姿には深刻な社会問題も含まれている。部員数減少の原因について、大野監督は「言い訳になるけど、(銚子の)過疎化はあります」と言った。

 銚子市のホームページによれば、1957年に最大9万2000人を超えた市の総人口は、2017年には6万2000人弱に減少した。高校生の子どもを持つ親の世代は少なく、高齢化も進む。

 大野監督は言った。「この試合を見て、県立銚子高校に入学しようと思う子が少しでも増えてくれればいい」

 野球人口の減少どころの話ではない。部員9人の野球部は、きっと日本全国の自治体にとって人ごとではない深刻な問題だ。(専門委員)

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