新井貴浩氏「セもDH制導入」論に待った!重視されなくなる代打&代走 戦術の面白みも希薄に

[ 2019年7月2日 09:00 ]

新井貴浩氏
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 【新井さんが行く!】交流戦は10年連続でパ・リーグが勝ち越した。交流戦が始まってからの15年間でセ・リーグが優勢だったのは09年の一度だけ。この結果と傾向だけを根拠に「セもDH制の導入を…」の意見には賛同できないかな。

 DHがあれば打者は1人分多く実戦を積めるし、先発投手も長いイニングを投げて力を付けることができる。でも、逆にポジションをなくす人たちもいる。代打や代走だ。セのほとんどのチームには「代打の切り札」と呼ばれる打者がいて、終盤の好機に登場すれば球場も一体になって盛り上がる。代走のスペシャリストもいる。どちらもDH制では、あまり重視されなくなってしまう。

 戦術の面白みも薄れないかなあ。投手交代の時に次の攻撃を考えて9番以外の打順に入れたり、野手と一緒に入れ替える“ダブルスイッチ”もある。そんな戦術を楽しみに観ているファンもいる。

 セ・リーグ劣勢の要因はDHの有無だけではないと思う。まず近年のドラフトで指名が競合する注目選手の多くが抽選でパ・リーグ入りしてきた巡り合わせがある。

 意識の違いも影響しているかもしれない。現役だった昨季までを思い返すと、「交流戦は何とか勝率5割で乗り切りたい」と考えていた。おそらくセは同じ感覚の選手が多く、「交流戦で抜け出してやろう」と思っているのは巨人くらいだったような気がする。

 逆にパの選手たちからはリーグ内の順位を少しでも上げる意気込みが伝わる。ちょうど先週末に開催されていた陸上の短距離走に例えれば、セのチームが「予選を通過できればいい」、パのチームが「絶対1位になる」と思って走るようなものかな。

 メンタルで言えば、交流戦明けは楽な気持ちで打席に立つことができた。特徴を知っている投手が多く、安心感があったから。リーグ戦に戻った後は相手を知らないという不安要素が減る。交流戦で苦しんだ選手たちも、いい方向へ変わってくると思う。 (毎月第1火曜日掲載)

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2019年7月2日のニュース