【富山】突如出現した下手投げのドクターK 高岡商・横森

[ 2018年7月2日 08:00 ]

第64回大会2回戦   高岡商3―1宇部商 ( 1982年8月13日    甲子園 )

<高岡商・宇部商>1失点完投勝利にガッツポーズする高岡商・横森
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 【スポニチ社員が選ぶわが故郷のベストゲーム】この夏、全国高校野球選手権大会は100回目。ふるさとチームの甲子園での活躍に熱くなった記憶を、北北海道から沖縄まで、今夏の代表校数と同じ56人のスポニチ社員がつづります。

 82年夏の高岡商はクジ運が悪かった。初戦の相手、宇部商には後にプロ入りする秋村謙宏投手がいた。山口大会の準々決勝と準決勝で連続ノーヒットノーランを達成した剛腕の名は全国にとどろき、チーム平均打率も3割4分以上。当時、軟式野球に熱中していた小6の私や級友も「無理やろう」と予想していた。

 ところが、ふたを開けてみると主役は高岡商のピッチャーになっていた。下手投げの横森宏行投手が、プロ注目の本格派を向こうに回して躍動。強力打線のバットが次々と空を切り打者全員からとなる計13奪三振。特に右打者の外に逃げるスライダーは圧巻だった。

 これほど空振りを取れる郷土の投手は、その後も見たことがない。一世一代と言ったら失礼かもしれないが、めったにない故郷代表の奪三振ショーは痛快で楽しかった。

 試合も手に汗握る好ゲーム。宇部商が初回に挙げた「1」以外はスコアボードに0が並ぶ。高岡商も秋村投手の前にホームが遠い。「よく頑張った」と、家族とテレビ観戦しながら話していた9回の攻撃。富山商との富山大会決勝で代打サヨナラ打を決めた古瀬が、甲子園でも代打で登場し安打で出塁すると、これを足がかりに一挙に3点。ついに下馬評を覆した。

 高岡商は次戦で熊本工に敗れて3回戦で散った。それでも突然聖地に現れたドクターKの記憶は、36年を経た今も強烈。その記憶をアップデートできる県勢投手の出現を待っている。

 ◆水口 隆博(大阪本社報道部)富山県出身。母校の富山・滑川(なめりかわ)は埼玉の滑川(なめがわ)総合とよく間違えられる。11年春から続いていた甲子園取材がこの春で途切れ、今夏に復活をもくろむ。

 <富山データ>

夏の出場 58回(通算26勝58敗1分け)

最高成績 8強6回(高岡商=1947年、魚津=58年、富山商=67、73年、富山北部=69年、富山第一=2013年)

最多出場 高岡商(18)

最多勝利 富山商(8)

出場経験 16校、うち未勝利9校

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