藤浪不振の原因は…落合氏「下半身が弱い。もっと走らせないと」

[ 2018年1月3日 09:32 ]

阪神・金本監督 落合博満氏と新春対談3

笑顔で初対談した落合氏(左)と金本監督
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 ――藤浪投手をどう見ているか

 落合 あれ(藤浪の不振)はランニング不足。下半身が弱いと思う。コントロールのいい投手は、やっぱり走る。だから昔の投手がね、たとえば今50歳や60歳になった人にね、キャンプの時に人がいないから、ちょっと投げてくれよと言って投げてもらうでしょう?乱れないもんね、1時間半投げても。ボールを投げることが終わってから10年、20年たっていても下半身が乱れることがない。それは体が覚えているんだろう。自分に今、生きていくために必要なものを彼は早いうちからやらないと、このまま終わる気がする。死ぬまで…じゃないけど、それくらいの覚悟をして、やらないと。もうちょっと下半身をいじめないといけないんじゃないの?

 ――藤浪投手は何が何でも復活させたい

 金本 そうですね。高校を出て、いきなり10勝、11勝、14勝で来て、それで僕が就任して…。僕は投手のフォームとかは一切言わないし任せっきりだったんですけど、まあ急に崩れてね。

 落合 だって、弱いもん。

 金本 今は投げ方を忘れている状態だと思うんですよ。

 落合 だから投げ方を完全に忘れさせるほど走らせないとダメだと思う。下半身を作らないと。投げる体力がないと思う。だから、どこかしら逃げている部分があるのではないかということを、俺は否定しない。たとえば俺が監督をやっている時、キャンプで陸上競技場に行ったら、みんな嫌な顔をする。

 金本 僕もそうですね(笑)。

 落合 設定が高くなるからね。たとえば10本を走らないといけないとする。その時、いつも“コイツの持ちタイムはいくつ?”と聞くんだ。それで“平均○秒です”となれば、そこから3秒くらい短縮してこないと1本とは数えないと言えば、彼らはちゃんと3〜4秒切ってくるからね。ということは手を抜いて走っているんだよ、ということになっちゃう。

 金本 まったく同じですね。(たとえば)鈍足の太った投手と藤浪が同じタイムなんです。おかしいだろう、と。藤浪は足が速いんですよ。

 落合 その投手(高橋)聡文だね(笑)。

 金本 いや、もっと若い投手です(笑)。でもタイムが同じなんで、藤浪は200メートルを涼しい顔をして走っているんです。片や太っている方は死にそうな顔をしているんです。だから“タイムを変えろ”と言ったんです。

 落合 藤浪も、あの若さで今からやっておかないと。アメリカの投手も走るからね。メジャーの選手は昼まで練習して、午後は家族サービスで子どもを連れて遊びに行く。だからメジャーの選手は練習をしないというふうにずっと言われてきていたけど、向こうの選手は朝4時、5時くらいから、人が来る前から走っているからね。人の見えないところで練習して。もしかしたらランニング量は向こうの選手の方が日本人より多いかもしれないよ。

 金本 ウチで一番、走るのはメッセンジャーですね。

 落合 そうだと思うよ。そうでないと、もたない。だからメッセンジャーなら、いっぱいお金をあげてもいいと思う。

 ――阪神は2年連続、広島に大差を付けられた。広島と阪神の差とは

 落合 俺は横一線と思っている。広島は、そんなに力があるわけではないと思う。おそらく周りからの先入観。そんなに差が付いているとは思っていないよ。マスコミに洗脳されているんじゃないの?広島、広島って(笑)。

 ――阪神が優勝するには

 落合 メッセンジャーの次に誰が先発で投げるのかということじゃないの。あとは1人でも2人でも(多く)完投してもらわないとね。いくら中継ぎがいいと言っても、人数を使えば使うほど誰か悪いのがいるから。先発は行けるところまで行ってくれよ、と。これがアメリカみたいに中4日で回すというのであれば、完投が少ないのも分かる。でも、5日以上空けてくれるわけでしょう。だから今、阪神が勝とうと思うなら、理想は中5日じゃないの?中5日が基本で、何週かに1人は中4日で行く…。先発6人はいらない。予備で作る分にはかまわないけど。中6日だと、今の阪神はキツいんじゃない?

 金本 キツいです。実は僕も考えていたんですよ、中5日。無理に6人目を作る必要はないのかなと。かえってリリーフに負担を掛けてしまうかなと。

 落合 俺が監督やっている時の阪神の“6回まで行けばいい”という。7、8、9回に久保田、藤川、ウィリアムスがいて。あれでも最後は、ひずみが来ているから。だから完投できる投手を作って5人。そうしたら中継ぎはもっと行ける。じゃあ投手は13人だな。(※3)

 金本 先発5、中継ぎ8人ですか?そうですね。でも中継ぎ8人ですか…。

 落合 だって、じゃあ誰に代打を出す?俺は聞きたい。どこに代打を出す?まずは投手だよな。

 金本 負けている時は捕手ですね。

 落合 捕手は意外性のあるヤツがいっぱい、いるじゃない。捕手に何を求めるの?“守ってくれよ”じゃないの?

 金本 もちろん勝っている時は代打は出しませんけど、3〜4点ビハインドの時は、8、9番で代打を行きますよね。

 落合 中日の捕手だって2割に行かないのばっかりだったよ。谷繁だって、2割2、3分。

 金本 確かに谷繁は中日に行って、少し打力は落ちましたよね。

 落合 だから、もう守り専門でいいからと考えれば、代打って後半しか使えなくなるんだよ。だから投手をうまく使おうと思うんだったら、最初は12人でもいいけど、途中からは13人いないと中継ぎはもちませんよ、と。だったら最初から13人にしちゃえば、ということ。長いイニング投げてくれないと、中継ぎがみんな疲労困憊(こんぱい)で動かなくなるから、もう、捨てゲームを作らざるをえない。だったら、どこかでそれを崩さないといけないだろうと。日本は中6日という間違った常識みたいなものを崩しちゃえばいいじゃない。そうしたら、それが普通になる。

 金本 僕はどっちかと言えば中5日派なんですけどね。無理に6人目を作るよりは。楽しみな投手とか、そこそこ力が付いてきた若手とかが6人目なら面白いと思うんですよ。無理やりは、ちょっと僕は正直…。

 落合 あと昔の先発投手は、お前に任せたら俺の勝ちがなくなるから最後まで行くって、ボールを離さなかったんだから。今は、そういう投手は少ないでしょ。

 金本 投げたがりはメッセンジャーです。交代って言うと、嫌がりますね。

 落合 みんなそう。負けている時はみんな“行く”と言う。負けしか残らないから。勝つ権利があると、お願いしますという。それはそれで、いいんだろうけど。

 ――金本阪神の3年目が始まった。それぞれ最後に…

 金本 タイガースのゲームもまた見ていてください。

 落合 これから見るようにするよ。金本のやりたいようにやって、また時間があればゆっくり話しましょう。 (終わり)

 (※3)1軍登録28人(ベンチ入り25人)の内訳は、投手12人(ベンチ入り9人)、捕手3人、野手13人が一般的。

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