広島・丸 打点挙げてなんぼ「打率落としても勝ちに近づく」

[ 2018年1月3日 13:01 ]

広島・丸佳浩外野手×野村謙二郎氏 新春師弟対談(中)

野村謙二郎氏(左)との新春対談で「日本一」を目標に掲げた丸
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 野村 振り返ると、昨季はコンスタントに打った。打撃面ではムラがなかったと思うけど、自己評価は?

 丸 シーズンを通して同じ入り方ができたことが、昨季は良かったと思いますね。

 野村 同じ入り方というのは?

 丸 今までだと、調子が落ちたり数字が出なくなると、強く振りたいとか、ヒットを打ちたいとか、結果をほしがっていました。基本に忠実に、常にセンター中心に入っていきたいんですが、ややもすると強引になり、それがまた力みや焦りにつながる悪循環で…。

 野村 丸の悪い時によく言われたのが、かかと体重。頭の中ではセンター中心に…と思っていても、強く振ることによって引っ張りにつながって…。

 丸 はい。センター中心に…と思っていても、いざ打席に入るとブレてしまっていたんですが、昨季はあまりブレなかったです。

 野村 うん。昨季の打球方向にブレなかったことがよく表れている。安部に左投手の攻略法を聞かれた時、丸は“左本だ、左本だ”と簡単に答えたらしいけど、左方向にホームランを打つっていうことは、自分にその意識があって好結果が出たから、そんな助言を送ったということ?

 丸 そうですね。反対方向に強く打つ準備をして入っていれば、打席の中でしっかりスイングしやすいのかな…と感じたので。

 野村 なるほど。

 丸 ヒットを打つ打たない…の結果より、自分のスイングをいかにするか。昨季は、それを考えながら打席に入れたので、そういう意識になりました。

 野村 自分の中で進化を感じる? 連覇した2年間と、その前とでは考え方も変わってきたと思うけど。

 丸 優勝する前までは、自分がしっかり打って守らなきゃいけない…だけでした。それが一昨年あたりから、試合の中の流れを感じるようになりました。“ここはスゴく大事、これは絶対にしてはいけない”とか。

 野村 やっていいこと、悪いこと。攻めなきゃいけない時と、引いて打席に入らなきゃいけない時がある。

 丸 はい。絶対やってはいけないことを、相手はさせようとしてくるから、配球はこうなるかな…とか。一歩引いた冷静な自分も出てきたかな…と。

 野村 バットマンは基本、全打席打ちたいよね。そこの考え方がレギュラーになりたての頃と、今では全然変わってきた…と。

 丸 そうですね。

 野村 昨季はチャンスにも強かった。MVPを獲っているから当然なんだけど、打点は意識していた?

 丸 打率、本塁打よりも打点を意識しています。クリーンアップを打たせてもらっているので、打点を挙げてなんぼ。前の打者がたくさん出塁してくれますし、ヒットでなくても打点を挙げる局面が増えた…と、この2年間は感じます。最悪内野ゴロでもいいや…っていう楽な感じでやっているのが、逆にいい循環なのかな…と。

 野村 守備隊形を見ながら、セカンドやショートにゴロを転がしておけばいい…とか、逆方向にフライを打っておけば犠飛になるな…とか。その発想は若い頃はなかった?

 丸 ないです。やっぱり、タイムリーを打ちたい。1死一、三塁でゴロを打って1点は入りますけど、自分の打率は下がるので。

 野村 そうだね。

 丸 若い時は自分のことが一番大事。今は別に自分の打率を落としても、得点が入れば勝ちに近づく…と思えるようになりました。

 野村 もう一つ感心するのは四球の数。リーグで5年連続トップ5に入っている。見逃しがちだけど、2ストライクに追い込まれてからの四球率が高い。意識はあるわけ?

 丸 結果的になればいいけど、取りにいこうとは思っていないです。そこも変わってきたな…と感じますね。昔は、不利な状況に追い込まれても強く振りたかった。今はファウルでいいや…ぐらいにしか思わないです。

 野村 若い頃は、カウント1―2でも、この辺に来たらガンといってやろう…という意識。それが今は7〜8割の軽打に徹する。

 丸 はい。ただ、打者のタイプもありますが、広輔のようにコチョンとファウルを打ちにいくことは、あまりしたくないです。相手投手には、スーッと入ると強くいかれる…と思われたいので。

 野村 ま、それは打順と役割の違い。広輔には広輔のスタイルがあるからね。

 丸 そうですね。

 野村 キクはどんな感じで見ていた?

 丸 昨季は、キクの中でも良くなかったと思うんです。でも、その中で最低限これだけはやろう…という意識を明確に感じました。体もですが、それ以上に精神面。その方がキツいだろうな…と思って見ていました。

 野村 そうだね。

 丸 WBCがあり、体のこともあり、それでも出続けないといけない立場。広輔があれだけ出塁し、その中で自己犠牲というか。

 野村 昨季はより黒子に徹していた。そういうところはあると思う。じゃあ、4番に座った誠也への意識はどう? アクシデントがなければ打点のタイトルを獲れたと思う。

 丸 力を付けたし、ボクは、カープの打者の中で一番チャンスに強いと思いますね。信頼しています。

 野村 後ろにつなぐという意味では、丸が勝負を避けられるケースもあるだろうし。

 丸 さっき打点が一番大事と言いましたけど、ボクが歩かされ、チャンスで誠也に回る状況が、点が一番入ると思います。確かにプレッシャーを受けていたし、それは感じました。ボク自身、前の2人に楽なシチュエーションをつくってもらったので、ボクも何とか同じ状況を(誠也に)つくりたい…と思っていたんですけどね。

 野村 では、守備に関してはどうかな。5年連続ゴールデングラブ賞を獲った。両サイドのことも含めて。

 丸 夏場までライトは誠也でしたが、彼も打てなくなると周りが見えなくなるタイプ。呼んでも気付かないぐらい、打てない時は引きずっていました。

 野村 誠也らしいというか、若さもあるんだけどね。そういう時は“守備は守備だゾ”って注意をするの?

 丸 はい。その時は“わかりました”って言うんですが、打てなくなるとまたそうなるんです。だから、口酸っぱく言わないといけない(笑い)

 野村 丸も若い時はそんな感じだった?

 丸 いや、ボクは今の誠也みたいにボコボコ打っていたわけじゃないので。当時は(広瀬)純さんが一緒に外野をやっていて、打てない時でもファウルラインをまたいだ時点で切り替える…と教わっていたので、それを心がけていました。

 野村 じゃあ、両サイドが松山、バティスタになった後半はどう? 上(解説席)から見ていると、松ちゃんは常に丸の方を見て指示を仰いでいるし、バティスタにも目配りしないといけない。

 丸 松ちゃんは、自信がないのもあるでしょうけど、常にボクの方を向いてくれるのでポジショニングはやりやすいです。バティスタもボクの方を見るんですが、まだ1軍の打者がわかっていない。この打者は引っ張る、流すっていうのを理解していないレベルなので、指示を逐一しなきゃいけないですね。

 野村 わかるよ。

 丸 でも、ボクと誠也がセンター、ライトにいて、終盤に野間や天谷さんが守備固めでレフトに入るとしますよね。全員の守備範囲が広いと、ボクは逆に守りづらいです。

 野村 守りづらいというのは間の打球?

 丸 間の獲れるゾーンがかぶるのは、連係の部分で難しい。逆に守備範囲が広くない松ちゃん、バティスタの方が割り切れます。

 野村 走りながら、全部オレオレ…と。

 丸 はい。そっちの方がボクは楽です。

 野村 両方が追い付くと、譲り合ったり、ぶつかったり…が、起きやすいということだね。野間なんて、若いし、足が速いし。イノシシみたいにやって来られると困るんだ。

 丸 (周りの)声を聞けって言うんですけど、まだ若いし、守備からポンと入るのが難しいことは、ボクもわかっているので。

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