ソフトバンク 球史に残る鉄壁の守備陣

[ 2017年12月1日 10:15 ]

ソフトバンク・上林
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 【宮入徹の記録の風景】ほころびを見せることはめったになかった。チーム守備率・993、同失策数38。今季ソフトバンクがマークした2つのプロ野球記録だ。チーム守備率は91年西武の・992を26年ぶりに更新する新記録。失策数は同じく西武と並ぶ2度目のタイ記録になった。失策内容を調べると打球の処理ミスが23、送球ミスが15。捕球ミスはシーズンを通じ一度もなかった。91年西武守備陣の失策内容を見ると飛球を落としたのは3度。今季ソフトバンクの落球0にはただ驚くばかりだ。

 ポジション別では捕手と外野手が2失策ずつと最少。捕手の失策は5月13日楽天戦で高谷、9月17日西武戦で甲斐が記録。2人とも二塁走者へのけん制球が悪送球になったもので、捕手失策で最も多い二塁盗塁阻止の送球がそれて三塁進塁を許したケースは皆無だった。外野手では急成長した上林が130試合に出場し無失策。補殺もパ最多の10と強肩で味方投手をサポートした。守備率10割でリーグ最多補殺は2リーグ制後14人目。ソフトバンクでは前身球団を含め上林が初めてだった。

 外野手の2失策は4月9日西武戦で中村晃、5月18日オリックス戦で柳田といずれも打球をはじき余分な塁を与えたため。ただし、翌5月19日の西武戦からシーズン終了までソフトバンクの外野手は103試合連続無失策で通した。外野手のシーズン失策合計が2以下は珍しく、2リーグ制後では81年西武2失策、87年広島2失策、89年巨人1失策、12年楽天2失策に次いで5度目。ソフトバンクでは06、11、13年の5失策を下回る最少失策だ。

 三遊間は松田、今宮が相変わらず安定した守備を披露した。2人は13年から今季まで5年連続でゴールデングラブ賞を獲得。同一チームの三遊間コンビが5年連続で受賞したのはパでは初めてだった。特に今宮の場合、失策数が規定試合以上の遊撃手としてリーグ最少の7。過去4年間はいずれも2桁失策を記録していたが、守備面で進境を示した。

 今季パの守備率2位は楽天の・986。ソフトバンクとは7厘の大差がついた。普通、チーム守備率1、2位が大幅に開くことはそう多くない。昨年までのパでは67シーズン中、1厘差以内が71・6%に当たる48シーズンを占めた。5厘差でも68年南海が・985で2位阪急の・980につけた一例だけ。7厘差はリーグ史上最大差になった。ドラフト制下で戦力が均質化しつつあることを考えれば驚異的な記録といえそうだ。

 セ・リーグに目を転じると、過去にシーズン守備率で2位に7厘差をつけたチームが存在する。52、56年の阪神だ。52年は・978で松竹の・971、56年は・984で中日の・977を引き離した。50年代の阪神は優勝には縁が無かったが、高い守備力がこうした数字に表れている。チーム守備率1位は51〜53年(3年連続)、55〜58年(4年連続)と8シーズンで7度。3位となった54年も・975でリーグ1位の巨人(・976)とわずか1厘差。54年が1位なら8年連続1位の金字塔となっていた。三塁手・三宅秀史、遊撃手・吉田義男の名コンビを中心にした強力守備陣は今や伝説といっていいだろう。

 チーム守備率1位を4年続けたのは阪神の他に66〜69年巨人、75〜78年近鉄とあるだけ。ソフトバンクは15年から3年連続1位を継続中。来季は連続日本一とともに史上4チーム目の4年連続チーム守備率1位も狙いたい。(敬称略、専門委員)

 ◆宮入 徹(みやいり・とおる)1958年、東京都生まれ。同志社大卒。スポニチ入社以来、プロ野球記録担当一筋。94年から15年まで記録課長。本社制定の最優秀バッテリー賞の選考委員会には、第1回から27回連続で資料説明役として出席。

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