阪神・竹安“強運”プロ初勝利 わずか9球「来年はずっと1軍で」

[ 2017年10月6日 05:55 ]

セ・リーグ   阪神2―1中日 ( 2017年10月5日    甲子園 )

初登板初勝利の竹安はウイニングボールを手にニッコリ
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 阪神・竹安は腕を振り、緊張を力に変えた。「みんなに顔がヤバいと言われていた」。初昇格即日に巡って来た初登板の機会。しかも同点の7回を任された。身震いしながら上がったマウンドで一人目の亀沢から空振り三振を奪って波に乗った。遠藤は左邪飛、武山は中飛。難なく3者凡退に抑えた直後に決勝点が入り初勝利をつかんだ。

 社会人時代の右肘手術の影響で昨季は球が走らず、新人6人の中で一人だけ1軍出場がなかった。今春キャンプで「(フォームが)おとなしくなってしまっていた」と気付き、変わった。今季は2軍で20試合で防御率2・76。140キロ中盤を計測する腕の振りで変化球のキレも生まれ、初昇格へつなげた。

 「1軍で投げないと意味がない。僕はまだ仕事ができていない」。口癖だ。2軍で好投しても残るのは悔しさやもどかしさ。実家の静岡から鳴尾浜球場に足を運ぼうとする父・建さん(50)に「見に来ないで」と言ったこともあった。胸中を察した父は登板のない日にユニホーム姿だけを見に来た。

 実家は漁業を営み、近年はサメの増加で金目鯛や伊勢エビの漁獲量が減り、昔ほど経済的な余裕がなくなった。4歳下の妹と7歳下の弟を持つ優しい長男として家庭の事情を察し、数十校からあった大学の誘いを断って社会人の道を選んだ。「大学に行くより自分でお金を稼いで野球をしてプロに行って恩返しないと…と思って」。孝行息子として高卒から最短の3年間でプロ入りを果たした。

 そして、ついに胸を張って投球する姿を見せられる日が訪れた。生観戦した父の前で力投。たとえ1回9球でも初勝利という最高の勇姿を届けた。「シーズンオフが大事になってくる。そこでしっかりアピールして来年はずっと1軍で投げられるように頑張ります」。優しくて熱い男のプロ野球人生が、やっと始まった。(巻木 周平)

 ○…2年目でプロ初登板の阪神・竹安が7回から救援し、1回無失点で勝利投手。阪神の投手が初登板勝利を挙げるのは、16年6月1日巨人戦で新人の青柳が先発勝利を挙げて以来。

 ◆竹安 大知(たけやす・だいち)1994年(平6)9月27日、埼玉県蓮田市生まれ、静岡県伊東市出身の23歳。高校は二松学舎大付に進学も1年時に伊東商へ転校。社会人の熊本ゴールデンラークスを経て15年ドラフト3位で阪神入り。2軍通算26試合5勝6敗、防御率3・45。1メートル83、80キロ。右投げ右打ち。

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