【石井一久クロスファイア】進むハイテク野球 機械より大事な「数字を読む力」

[ 2017年6月21日 11:30 ]

東京ドームに設置されている高性能弾道測定器「トラックマン」
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 日本球界でも「トラックマン」(高性能弾道測定器)という言葉が徐々に浸透してきた。現在は7球団が導入。球の回転数や本塁打の飛距離や角度などを公表している球団もある。先日、Koboパーク宮城を訪れ、14年に日本ではいち早く導入した楽天のシステムを見せてもらった。

 楽天は立花陽三球団社長自らメジャーの球場に足を運ぶなど、最先端の技術に常にアンテナを張っている球団。トラックマンに関しても、データの活用に精通している専門的なスタッフがおり、松井裕ら選手も試合後にそのデータを確認し、技術向上につなげている。日本より5、6年先を進んでいるメジャーでは、NASA(米航空宇宙局)で働いていた人を採用したり、言葉は悪いが「数字オタク」のような専門家の奪い合いになっていると聞く。

 ハイテク機器によるデータを活用することで、大躍進を遂げているのが、青木が所属するアストロズだ。今季ブレークしているマクラーズという右腕は、データチームが、マイナー時代にカーブの回転数が平均値より高いことを見抜き、「他の球種を磨くよりも、カーブの割合を増やすように」とアドバイスした。今のメジャーは160キロ前後を投げる速球派はいくらでもいるだけに、逆にカーブの回転数が高い投手を多く集めている。投手陣の全投球におけるカーブの割合は14・1%で30球団中4番目に多いそうだ。

 日本球界も、今後ますますトラックマンの需要が増してくると思うが、重要なのは機械ではなく、データから何かを読み取り、それを生かせるスペシャリストの存在だ。例えば、ケガの防止。これまでは、コーチが目で見て選手の体調の変化に気づいて指摘していたが、トラックマンではリリースポイントや肘の位置の変化、あるいは回転数の減少など、数値で「異変」が明らかになる。

 それを読み取る能力が大事で、将来的にはコーチにもその能力が求められる。そして、その能力があるコーチを見極めるフロントの能力も大事になる。そして…、キリがないか。 (スポニチ本紙評論家)

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2017年6月21日のニュース