2世育てる!筒香が古巣スーパーバイザー就任で少年野球改革

[ 2017年1月16日 05:30 ]

打撃練習で子供達と話す筒香
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 「筒香2世」を育てる――。DeNAの筒香嘉智外野手(25)が15日、中学時代に所属した硬式野球チームで、大阪府河内長野市を本拠地とする堺ビッグボーイズの小学生の部「Team Agresivo(アグレシーボ)」のスーパーバイザーに就任した。現役選手が少年野球チームの運営に関わるのは異例。3月にはワールド・ベースボール・クラシック (WBC)に出場する侍ジャパンの主砲は競技人口が減少している現状を憂い、野球界の未来のために立ち上がった。

 小雪がちらつくいてつく寒さにも、この男の言葉には熱がこもっていた。河内長野市内の堺ビッグボーイズ(堺BB)専用グラウンド。同チームが15年4月に設立した小学生の部「Team Agresivo」のスーパーバイザーに就任した筒香は、少年野球の現状について熱弁した。

 「海外で子供たちに指導しているところを見て、日本とは対極的だと感じた。すぐに良くなってほしいと思うあまり、子供たちに答えを与えすぎている。自分で考えて行動できる子が少なくなっている。考える力がつけば、今の時代を生きる力になると僕は思います」

 25歳の若者が、野球界の未来のために行動を起こした。オフに米国やドミニカ共和国でトレーニングを重ねる中で、海外の少年野球チームの練習を目の当たりにした。「向こうでは指導者が怒ったり怒鳴ったりというのは1回も見たことがない」。勝利至上主義になりがちな日本の指導法とは違い、自主的にのびのびと練習に励む姿だった。

 全国的に強豪で知られる堺BBも練習は自主性を重んじており、筒香自身も「ここが土台となって全てが始まった」と言う。瀬野竜之介代表(46)は子供の頃から見続けてきた筒香の相談を受け、小学部を設立。チーム名の「Agresivo」はスペイン語の「積極的に」という意味で、筒香がドミニカ共和国に武者修行した際に心に響いた言葉でもある。

 この日はスーパーバイザー就任式に臨んだ後、体験会を実施。自らもシーズン中に毎日行っている体の使い方を覚える体操を指導した。筒香は常々、野球離れが進む現状を心配している。「ただ野球をやっていればいいわけではない。野球を通じて人生に生かさないと意味がない」。単に野球人口を増やしたいというだけではない。野球に取り組むことで、子供たちの成長を願っている。

 球界を代表する選手だけに、その影響力は大きい。シーズン中に顔を出すことはなかなか難しいができる範囲でチーム運営にも携わっていく。「人は前例がないことを凄く嫌うが、そう言っていたら何も変わらない。野球界に還元できることは強い勇気を持ってやっていきたい」と言った。

 3月のWBCでは侍ジャパンの主砲として、世界で戦う。スーパーバイザー就任は自らのモチベーションにもつながる。「ただいいプレーをするだけでなく、自分の奥深い部分に磨きをかけていきたい」。普段はクールな男は最後まで熱かった。 (中村 文香)

 ▽堺ビッグボーイズ 公益財団日本少年野球連盟(ボーイズリーグ)に所属する中学部の硬式野球チーム。「強く、大きく、たくましい、ビッグボーイに育てること」を目標に1984年に設立。練習は大阪府河内長野市の専用グラウンドで行われており、室内練習場も整備されている。OBには筒香の他に、西武の森、元近鉄の大西宏明氏、元阪神の橋本大祐氏らがいる。

 ▼堺ビッグボーイズ瀬野竜之介代表 筒香とは小学部を設けることによって、野球を楽しめる環境をつくろうという話をした。プロに憧れる子供たちにとって、筒香が身近で応援してくれるのはうれしいこと。スーパーバイザーを引き受けてくれて感謝と敬意を表します。

 【過去の現役選手が 携わった野球チーム】

 ☆桑田真澄 巨人時代の04年に中学硬式チーム「麻生ジャイアンツ」を設立し、会長に就任。チームは13年夏に解散したが、同年9月に「麻生ボーイズ」として再出発。OBにロッテの関谷がいる。

 ☆大家友和 エクスポズ(現ナショナルズ)時代の04年に「大家友和ベースボールクラブ(OBC)」を設立し、GMに就任。OBCはその後、社会人チーム「OBC高島」と中学硬式チーム「草津リトルシニア」を結成し、大家もGMに就任。

 ☆サブロー&福浦和也 ロッテ時代の15年に中学硬式チーム「千葉幕張ボーイズ」を設立し、オーナーに就任。ロッテのチームドクターがスタッフとしてサポート。

 ☆野茂英雄 ドジャース時代の03年に社会人チーム「NOMOベースボールクラブ」を設立し、オーナーに就任。運営費数千万円を出資し、ユニホームも自らデザイン。

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