【石井一久クロスファイア】単純な足し算ではない福留「日米通算」の軌跡

[ 2016年6月29日 11:10 ]

<神・D>試合前、日米通算2000本安打を達成した福留は、場内アナウンスで紹介され帽子を取って声援に応える

 阪神の福留が日米通算2000安打を達成した。この「日米通算」というくくり方は、イチローがピート・ローズの記録を抜いた時にもいろいろ話題になった。僕は記録の目安として合算するのはいいが、基本的には日本と米国の成績は別物であり、単純な「足し算」ではないと思っている。

 福留は、中日で1175本、メジャーで498本、そして阪神で327本(2000安打時点)。だが、中日時代と同じやり方でメジャーで498本を打ったわけではなく、メジャーのやり方そのままで阪神で327本を積み上げたわけではない。これは福留も、青木(マリナーズ)も言っていたことだが、日本と米国では打撃のアプローチが全く違うという。

 ボールが打者の手元で動くメジャーの投手に対応するには、ヒッティングポイントをコンマ何秒か遅らせ、より引きつけて打つ必要がある。投手のタイミングも違う。メジャーの投手は一般的に腕の振りの後ろが小さく「1、2、3」のリズムで投げてくるが、日本の投手は少しためがあり「1、2の~3」となる。このわずかな違いも、打者にとっては大きな違いだ。メジャーで5年間プレーした福留は阪神に戻ってきた当初「今までのタイミングで振っても、思ったよりボールが来ない」と話していた。

 阪神での最初の2年間は思うような数字を残せず、批判もされた。中日時代のやり方に戻せばいい、という単純な作業ではない。年齢もそれだけ重ねており、当時と同じ体ではない。阪神1年目のオフには断食を行うなどして、肉体改造にも取り組んだ。メジャーに挑戦した時の努力と、日本に帰ってきた時は努力は全く別物だと思う。その結果が「日米通算2000安打」なのだ。

 福留は友達だけど今回お祝いのメッセージは送っていません。相当な数のメールが来ていると思うので、返信の手間をかけさせるのも悪いので…。僕も野球の仕事をしているので、近いうちにどこかで会うでしょう。その時に「おめでとう」を言います。(スポニチ本紙評論家)

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2016年6月29日のニュース