秀岳館・鍛治舎監督「まだスタートライン」日本一が目標

[ 2016年1月30日 05:30 ]

センバツ出場が決まりカッツポーズをする秀岳館のバッテリー(左から)有村、九鬼

 第88回  選抜高校野球大会(3月20日から12日間、甲子園)の出場校を決める選考委員会が29日、大阪市の毎日新聞本社で行われ、秋の九州大会で初優勝した秀岳館(熊本)が03年以来、13年ぶり2度目の代表校に選出された。社会人野球の松下電器(現パナソニック)の元監督でNHKの高校野球解説者としても知られる鍛治舎巧監督(64)は「出場は、道半ば。まだスタートライン」と当然のように、日本一を目標に掲げた。

 午後3時35分。選考委員会の様子がインターネットで生中継され、九州代表の発表が始まる矢先だった。中川静也理事長兼校長が座るテーブルの電話が鳴った。3コール目で受話器を取り「ありがたく、お受けいたします」と笑顔で答える。その瞬間、秀岳館の13年ぶりのセンバツ出場が決まった。

 就任2年目の鍛治舎監督は「監督になって1年10カ月。感慨深いものはあるが、まだ道半ば。日本一に立つためにスタートラインに立っただけ。熊本県勢の復活も果たす。一緒に思い出をつくろう」と67人の部員に語りかけた。

 秋の九州大会では4試合で実に54安打31得点と打ちまくった。4番の九鬼主将を軸に、一気に畳み掛ける打線が特徴に映るが、鍛治舎監督は否定する。「打のチームというカラーだけでは勝てない。強いチームはカラフル」と開幕まで残り50日となった今も、チームの底上げに余念がない。

 明治神宮大会後の11月15日からセンバツ開幕直前の3月19日までを3クールに分け、(1)スケールアップ(2)スキルアップ(3)センスアップの名付けて「3S作戦」を展開中。(1)はロングティーや筋トレに加え、食事は1日5食を義務付けている。「体重は確実に4キロ増えて飛距離も増している。甲子園優勝チームの平均体重は75キロだから、もう少し」と指揮官は手応えを口にする。(2)は今大会の全出場校のDVDを早くも入手。相手と状況に応じたシート打撃で総合力に磨きをかけ、(3)については試合直前まで甲子園での戦術論、精神論を教え込むという。

 高校野球解説者として「2000試合以上を現場で見た」という自負もある。01年夏に秀岳館が甲子園に初登場し、常総学院(茨城)に3―0で勝った試合も解説した。「爽やかないいチームだな、という印象が残っていた。楽しみで仕方ないけど実力は今の方が上。失敗は若者の特権ですが、失敗しそうでしない野球ができる」と58年の済々黌以来、県勢2度目の春制覇に自信を見せる。

 すでに部室の壁には常に目標を意識するため「88回選抜野球大会日本一ありがとうございます」と書かれた紙が貼ってある。当然「鍛治舎チルドレン」も頂点しか見ていない。(井上 満夫)

 ◆鍛治舎 巧(かじしゃ・たくみ)1951年(昭26)5月2日、岐阜県生まれの64歳。県岐阜商では3年時にセンバツ通算100号を放つ。早大では5季連続で打率3割をマークし、日米大学野球選手権では4番も務めた。74年に松下電器(現パナソニック)入社後、2年目に阪神から2位指名を受けたが拒否。81年に引退。87~91年まで同野球部監督。NHKの解説は85~92年、98~10年に務めた。パナソニック専務役員を14年3月末で退社後、同年4月から秀岳館の監督に就任。

続きを表示

2016年1月30日のニュース