センバツ注目校のキーワードは「元中学生の指導者」

[ 2016年1月30日 08:05 ]

秀岳館の鍛治舎監督

 3月20日に開催する、第88回選抜高校野球の出場校が発表された。

 連覇を狙う高校、注目選手を擁する高校、初出場となる高校……。今年もバラエティに富んだチームが文字通り選抜された印象がある。その中でも、今春のセンバツで注目したいチームを厳選して紹介したい。

◎高松商(香川/20年ぶり26回目の出場)

「センバツの前哨戦」といえる昨秋の明治神宮大会では、準決勝で大阪桐蔭、決勝戦で敦賀気比、と強豪を撃破して優勝。そして、20年ぶりの甲子園出場を決めた。

 第1回センバツ優勝校でもある高松商は、春2回、夏2回の甲子園優勝を誇る古豪。主な野球部OBには元巨人監督・水原茂氏がいると聞いただけでも、その歴史の重さを感じる。近年では松永昂大(ロッテ)がプロに進んでいる。

 スケールが大きい注目のドラフト候補というような選手こそいないが、実戦的な選手たちが攻撃力と機動力を前面に押し出し、戦い抜いた。香川県大会では決勝戦で小豆島に敗れて準優勝となるも、5試合を戦い4本塁打18盗塁とその持ち味を遺憾なく発揮してきた。四国大会決勝戦でも、戦前では明徳義塾有利のなか、6-1で勝利して、26年ぶりの四国制覇を決めた。

 また明治神宮大会決勝戦では、3点ビハインドで迎えた8回に一挙5点を奪い逆転。9回にも3点を追加して、8-3で勝利した。センバツでは「古豪復活」ののろしを上げる戦いを期待したい。

◎敦賀気比(福井/2年連続7回目の出場)

 昨春はエース・平沼翔太(日本ハムドラフト4位)の力投、打ってはラッキーボーイ・松本哲幣が準決勝で2打席連続満塁弾、決勝戦でも試合を決める2ランを放ち、センバツ初優勝。紫紺の優勝旗が初めて北陸に渡った。

 新チームになっても大きな戦力ダウンはなく、昨秋は福井県大会、北信越大会を制した。これで甲子園は4季連続の出場となり、1982年のPL学園以来となる、センバツ連覇に挑む。

 平沼らがいた前チームでも試合経験を持つ投打の中心がチームをけん引。投手では188センチの長身を誇る山崎颯一郎がプロのスカウトの注目を集める。昨夏の甲子園2回戦の花巻東戦では、先発した平沼が打ち込まれて5回からマウンドへ。2回を投げて4奪三振の好投により、「スケールの大きさは平沼以上」と評価を上げた。

 昨秋の明治神宮大会・創志学園戦では、11奪三振を奪い1失点で完投。緩いカーブをうまく使い、緩急ある投球が光った。決勝戦の高松商戦では終盤に打ち込まれ、敗れただけに、センバツへ期する思いは強い。

 打線では前チームから「3番・遊撃手」に座る林中勇輝がいる。攻守で野球センスが高く、キャプテンとしてチームを統率。昨春は準々決勝の静岡戦でサヨナラ打を放つなど、勝負強いバッティングも見逃せない。

◎秀岳館(熊本/13年ぶり2回目の出場)

 昨秋の九州大会では、準々決勝の八重山戦で8-1、準決勝の日南学園戦で6-1、決勝戦の海星戦は13-2と圧倒的な試合展開で優勝を果たした。

 一昨年の4月からチームの指揮を執る鍛治舎巧監督は、県岐阜商高、早稲田大、松下電器(現パナソニック)と名門チームを渡る歩き、名選手として活躍。引退後は松下電器監督や全日本のコーチを歴任した後、中学硬式野球チーム「枚方ボーイズ」の監督としても名を馳せた。NHKの甲子園解説者としても知られており、社業ではパナソニックの専務まで務め上げた。

 レギュラーの大半が枚方ボーイズ出身であり、投手陣の有村大誠、堀江航平の両右腕はともに140キロを超えるストレートを投げ込む。1番を打つ松尾大河、4番でキャプテンの九鬼隆平と、打線にも好選手が揃う。

 監督就任の際には「3年で日本一になる」と語った鍛治舎監督。今年はその3年目となる年に監督として初めて甲子園のグラウンドに踏み入れることになった。果たして有言実行となるのか? 秀岳館のセンバツでの戦いに注目だ。

 最後にこぼれ話をひとつ。実は今回取り上げた高松商・長尾健司監督も、敦賀気比・東哲平監督も、秀岳館・鍛治舎監督も「中学野球指導者出身の高校野球監督」という共通点があるのだ。

 ほかにも初出場の明石商を率いる狭間善徳監督は明徳義塾中で全国制覇をした名監督だ。11年ぶり2回目の出場となる青森山田の兜森崇朗監督は、昨年8月に就任したばかりで、その前は青森山田リトルシニアの監督として、全国ベスト4という実績を持っている。今回のセンバツには、そんな見どころもあったりするのだ。(『週刊野球太郎』編集部)

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2016年1月30日のニュース