稲葉 ノムさんの教え胸にコーチ兼任…同期・宮本には背中押された

[ 2013年1月10日 14:21 ]

2000本安打達成セレモニーで野村氏から花束を贈られる稲葉

野球人 日本ハム・稲葉(下)

 日本ハムは昨季、3年ぶりのリーグ優勝を果たし、クライマックスシリーズ(CS)も突破したが、日本シリーズで巨人に完敗した。「そう簡単に野球の神様はいろいろと与えてくれない。もっともっと野球を勉強しなさいということだと思った」。稲葉にとっての原点はヤクルト時代の恩師、野村克也監督からの教えだ。

 入団1年目の95年から起用され、同時に徹底的にID野球を叩き込まれた。2年目の96年のシーズン中には「いきなり巨人の村田さん(真一=現巨人打撃コーチ)についてリポートを書けって言われたけど話したこともないし、どんな性格かも知らなかった」。リポート用紙1枚にそれまでに対戦した感想などを書いて提出したが「何だこれ?」と突き返された。そこから村田を食い入るように観察。性格も徹底的に調べて再提出した。捕手の性格を知ることで投球の組み立て、配球が読めることを学んだ。

 「若い選手たちも、もっと配球について勉強した方がいい。どんどんスコアラーに聞いてもいいと思う」。昨季は主力に故障者が出ても若手の台頭でシーズンを乗り切った。だが、同じ事をして連覇は狙えないことに若手も気づいてほしいとベテランは警鐘を鳴らす。だから、シーズン終盤はベンチで、グラウンドで何度か厳しい姿をあえて示した。

 10月5日、長い2軍暮らしを経て68日ぶりにマウンドに上がった斎藤が楽天打線に打ち込まれた。マウンドに駆け寄った稲葉は「もっと攻めろよ!」と厳しい口調で叱咤(しった)した。

 「斎藤は何度も同じ間違いを繰り返していたからね。放っておくのは簡単だけど、チームメートとしては、やっぱり成長してもらいたいから」

 稲葉は今季からコーチ兼任となる。球団があえて肩書をつけなかったのは打撃、守備、走塁だけでなくすべての面で後輩を育ててもらいたいからだ。11月下旬。球団から打診を受けた際は「プレーヤーとしてまだまだやりたい」という気持ちも強かったが、94年ドラフト同期、2歳年上で、同じく兼任コーチのヤクルト宮本の「自分自身のためにも受けた方がいいぞ」の言葉に背中を押されて受諾した。

 主力としてチームの連覇を狙う一方、3月のWBC日本代表候補にも名を連ねる。「新たな挑戦ですよ。この世で野球以外で僕が必要とされる場所はない。僕は死ぬまで野球に携わっていきたい」。リーグ連覇、日本一奪回、世界一3連覇。稲葉の挑戦はまだまだ続いていく。

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2013年1月10日のニュース