中畑監督が忘れられない松井の「裏切り者」メッセージ

[ 2013年1月10日 12:06 ]

94年、松井にアドバイスする中畑打撃コーチ(当時)

 耳に残って離れないフレーズがある。2002年11月1日。松井がメジャー挑戦を表明した記者会見で発した「今は何を言っても“裏切り者”と思われるかもしれませんが、いつか“松井は行ってよかったな”と思ってもらえるような気持ちを持って頑張ります」という言葉である。

 「みんな夢を語ってメジャーに行く中で、誰が“裏切り者と思われるかもしれませんが…”なんて言うだろうか。しかも、あの若さ(当時28歳)で。松井がファンに残したメッセージの意味は重いよ」

 DeNA・中畑監督は松井が入団したときの巨人の打撃コーチ。自宅の地下室でスイングさせ、合宿所まで送っていった時期もある。その人となりを知っているからこそ、松井をメジャー挑戦に駆り立てた当時の環境を無視できない。

 球界の戦力バランスを考えず他球団の主力選手を次から次へと獲得し、生え抜きの若手からチャンスを奪う。そんなチームにいたたまれなくなって太平洋を渡る決心をしたのではないか。

 「松井は歴史あるヤンキースという球団で巨人軍の素晴らしさを示したんだ。生きざま、野球に対する心、情熱…。だからニューヨーカーに認められたんだ。オレは“行ってよかった”と思ってるよ」

 現役時代、長嶋茂雄、王貞治の下でプレーした中畑監督。「ONがどれだけ球界全体のことを思い、幸せな世界をつくってくれたか」。その志を受け継いでDeNA監督就任以来メディア、ファンに対して惜しみないサービスを続けている。同時に、ヤ軍で巨人軍選手の威厳を示した松井はONの系譜を継ぐ特別な存在だと認めている。

 「時間にルーズなところもあるけど、不器用な男が期待通りに成長してくれている。いい指導者になって球界に恩返ししてほしいね」

 一日も早い日本球界復帰を望んでいる。

続きを表示

2013年1月10日のニュース