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【コラム】海外通信員

ワンバックの存在感は今も大きい

[ 2016年2月4日 05:30 ]

15年12月16日現役最後の試合となった国際親善試合・中国戦でのワンバック(AP)
Photo By AP

 2月7日にアメリカンフットボールの最高峰NFLの2015年シーズン優勝決定戦、第50回スーパーボウルが開催される。そのテレビ中継は毎年視聴率が40%を超えるほどの大人気ぶりだ。そしてそのなかでBMW傘下の自動車ブランド、ミニが放送するCMが、アメリカのサッカー・メディアやファンらの視線を集めている。元女子アメリカ代表のFWアビー・ワンバックが出演しているからだ。

 CMにはテニス選手のセリーナ・ウィリアムズや俳優のハーヴェイ・カイテル、元MLB投手のランディ・ジョンソンなど6人のセレブが出演する構成となっている。その1人ワンバックが選ばれているのだが、特にワンバックが注目されているのには引退時の言動が背景にあるからだ。

 女子代表最多の通算184得点を記録したワンバックは昨年10月27日に昨シーズン限りでの現役引退を表明。12月16日に行われた中国との国際親善試合で現役生活にピリオドを打った。この試合でワンバックは先発出場したものの得点を挙げられず、後半途中での交代なったものの、詰めかけた3万人を超える大観衆から拍手を送られた。

 そんなワンバックが最終戦直前に出演したのがスポーツ飲料ゲータレードのCM。そのCMの中で彼女が語ったのが「私を忘れて」ということだった。また「次の世代が、自分が忘れ去られてしまうようなすごいことを起こしている場所に遺産を残すことを望む」とも話していた。

 そして試合後、ワンバックはツィッターにやはり「私を忘れて」と投稿した後、アカウントを削除。さらにフェイスブックやインスタグラムといった全てのSNSアカウントを閉鎖したのだ。くしくもネットでの”忘れられる権利”が世界的に注目されているだけにワンバックのこの主張はサッカーを超えて関心を集めることになったのである。

 だが、ワンバックが忘れられようとしていた期間は1カ月も続かなかった。1月4日にツィッターのアカウントを再開、6日は朝焼けの写真と共に「ソーシャル・メディア・ワールドからのいい休憩だった。そして自分のオールド・ライフにも」と投稿し、SNSでの活動を再開した。さらに8日はテレビのトークショーにも出演した。

 そして今回のCM出演である。今回のCMのテーマは「ラベルに逆らう」というもの。先行公開された予告CMでワンバックは「私につけられたラベル?お転婆娘、同性愛者、あばすれ女…、気にしないわ」と自分には様々なラベルが貼られ、それに逆らってきたことを告白している。

 果たして本編のCMでどんなことが語られ、表現されているだろうか。いずれにせよワンバックの存在感は今も大きいことだけは確かだ。(渡辺史敏=ニューヨーク通信員)

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