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【コラム】海外通信員

なでしこジャパンがサッカー王国ブラジルに降臨(後編)

[ 2023年12月16日 11:00 ]

 
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●女子マーケットの活性化

 サンパウロ州サッカー協会、ブラジルサッカー連盟、南米サッカー連盟とさまざまな女子の大会が整備され、集客の見込めるイベントとしての位置付けになってきた。有料テレビ放送では女子サッカーはブラジル国内のみならず欧州の試合も流れる、国内の試合はYoutube放送でカバーするなどファン獲得のために努力をしている。

 11月末に行われたコリンチャンス対サンパウロFCのパウリスタ選手権(サンパウロ州サッカー協会主催)決勝では、コリンチャンスアリーナに4万人の観衆が集まった。

 同じく今年のブラジル選手権の準決勝はコリンチャンス対フェホヴィアーリア戦は42500人と南米最高観客数を記録した。決勝のコリンチャンス対インテルナシオナルは41000人だった。

 日本ではWEリーグの観客数がなかなか増えないのに対して、ブラジルでは女子サッカーの観客数は年々増えており、記録を更新している。カナリア女子となでしこジャパンの2連戦は、1試合目が平日午後3時で約7千人、2試合目は日曜11時で約13000人だった。

 観客席には、女の子がたくさん!インフルエンサーらしき女性たちもいた。

 これまでブラジルでは女子の花形スポーツはバレーボールだったが、バレーは身体能力、身長が高いことが必須条件であり、持って生まれた遺伝子がかなり左右する。しかし、サッカーは身長が180cm無くてもプレーできる魅力的なプロスポーツだ。

 スタジアムに来ていた女の子たちは目を輝かせてセレソン女子を見て、大きな声で声援を送っていた。そんな姿を見て、ブラジルサッカー界の女子の未来と無限の可能性を感じた。プロになれる、海外への道も開けていることは、とても魅力であり、この子達の中から、ブラジルサッカーの次世代スターが生まれるのかもしれないと思うとワクワクした。

●なでしこジャパン

 この2連戦は、なでしこジャパンが来年2月にパリ五輪アジア最終予選で北朝鮮との2連戦をするためのシミュレーションだった。

 移動距離も多い中の体調管理、コンディショニング調整をして、さらに完全アウェイのプレッシャーを体験しながらも、1試合目ブラジル4-3日本だった。2試合目は0-2で日本の完封勝ちだった。

 ブラジルはフィジカルが強く、ここぞというときの決定力もあった。一方、なでしこのパスワーク、コンビネーション、ゴールを狙う積極性とさすがのレベルの高さを見せられたものだ。

 マンチェスターCの長谷川選手は身長157cmと私より小さかったが、見た目のフィジカルでなく、体幹の強さやクレバーさが秀でて、パスもすばらしい。日本の、アジアの、ブラジルの、アメリカの、欧州の女の子たちに大いにお手本となるプレーヤーの一人だ。第1試合目の後、日本サポーターのところまで行って、サイン、セルフィーとスター選手ならではのファンからのリクエストにも最後まで応えていた。

 FIFAランキング8位の日本と9位のブラジルは良きライバルとして、パリ五輪の舞台でも対戦が見てみたいものだ。

 コリンチャンスとサンパウロFCのスタジアムで「君が代」が流れ、八咫烏のシンボルが掲げられている光景を見るのは感無量であった。ましてや、モルンビーでは失点0の完勝だ。

 ジャポネス日本人は下手と言われたこのブラジルで、なでしこ達はジャポネーザ日本女性の強さ、日本女子サッカーのレベルの高さをサッカー王国の人々に見せつけてくれたのだ。

 Weリーグにはそんな世界に誇れるジャポネーザの若手がたくさんいる。海外に出ていってしまう前に、実物を、生の試合を見れるチャンス!

 未来の代表、世界で活躍する選手を夢見る子達の憧れの舞台を応援しないわけにはいかないだろう。

 「女子サッカーが生き残るにはあなたたち次第なの。自分たちの価値をもっと高めて!」

 マルタの叫びはジャポネーザ達にも送るエールだ。(大野美夏=サンパウロ通信員)

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